第20話

☆☆☆


昼ご飯を食べたあたしたちは、アトラクションに並んでいた。



これからがデートの本番だけれど、あたしの心は浮かなかった。



「愛奈、どうした? 体調でも悪いか?」



健太郎にそう聞かれて「ううん、大丈夫」と、左右に首をふる。



チラリと健太郎の顔を確認すると、それは明日香の顔になってあたしに笑いかけてくるのだ。



あたしはすぐに健太郎から視線を逸らせた。



これは自分の思い込みだ。



隣にいるのは健太郎で、明日香じゃない。



必死でそう思うのに、明日香の顔は消えてくれない。



明日香の体は今頃どうなっているだろうか?



魚につつかれて、水でブヨブヨに膨れあがっているかもしれない。



「ほら、順番が来たぞ」



健太郎にそう言われて、ハッと我に返った。



いけない。



こんなことばかり考えているから、変な幻覚を見たりするんだ。



今は思いっきり楽しまなきゃ。



「うん」



あたしは笑顔で頷いたのだった。

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