第2話

「そこまで言うなら、もう小説を辞めてもらうしかないよね?」



あたしは呆れながらそう言った。



大人しく退部して、あたしたちの前からいなくなればよかったのに。



「どういう意味?」



その言葉に返事をせず、あたしは咲紀の右手を掴んだ。



「痛い! 離して!」



暴れ出す咲紀を明日香と美春の2人が取り押さえる。



そのまま床に、うつ伏せになるように押さえつけると、咲紀はようやく大人しくなった。



あたしは咲紀の右腕を背中側へと持ち上げる。



「なにするの!? やめて!!」



咲紀の悲鳴が響き渡る。



「才能なんてないくせに、調子に乗らないでよね」



あたしは咲紀の耳元でそう言い、咲紀の腕を思いっきりへし折ったのだった。


☆☆☆


「お前は階段でこけて落ちたんだ」



あたしは咲紀にそう言い、解放した。



咲紀の右腕は力を無くし、軟体動物のようにぶら下がっている。



咲紀は小さな呼吸を繰り返し、体を震わせているだけで何も言わない。



「ほら、立てよ」



そう言って無理やり立たせると、青ざめてうつむいてしまった。



「どうするの?」



明日香がそう聞いて来たので「今言った通りにする」と、答えた。



これから咲紀を階段から突き落とすのだ。



「でも、ここ一階じゃん」



「一度二階に上がらないとね」



面倒だけど、仕方がない。



「美春。廊下に人がいないか確認して」



あたしがそう言うと、美春はすぐにドアをあけて廊下を確認した。



「誰もいない」



その言葉を合図に、あたしと明日香は咲紀を引きずるようにして歩き出した。



痛みで時折意識が遠のくのか、咲紀の足取りは重たい。



「美春も手伝って」



3人がかりでどうにか2階まで上がってきた時、咲紀の意識はすでになかった。



暴れたり叫んだりされないから丁度いい。



咲紀の体を階段の前に寝かせると、あたしたちはその体を突き落としたのだった……。

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