釣りガールズ

第35話 日常

　ＬＧＢＴＱとは？

　Ｌはレズビアン。女性同性愛者だ。

　Ｇはゲイ。男性同性愛者。

　Ｂはバイセクシュアル。両性愛者。男性も女性も愛せる人。

　Ｔはトランスジェンダー。性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人。戸籍では女性でも男性の心を持つ人と男性とされていても女性の心を持つ人だ。

　ではＱは？

　これはクエスチョニング。

　自身の性自認が定まっていない人。

　自分の性的指向がわからない人。

　ＬＧＢＴＱのいずれも性的マイノリティで、圧倒的多数の女性が男性を愛し、男性は女性を愛する。

　カズミはＬだ。性自認は女性で、愛の対象も女性。

　美沙希は最近Ｑになった。自分が多数派なのか、Ｌなのか、はたまたＢなのかわからなくなった。

　ふたりの日常は続いている。

　キスはしたが、どちらも告白はしていない。

「愛してる」も「好き」も言っていない。

　相変わらず学校に行き、放課後や休日は釣りをしている。

　愛の語らいなんてしていない。

　ふたりの会話の大半は釣りの話だ。

　６月中旬の土曜日、美沙希とカズミはキタトネ川に来ていた。

　美沙希は久しぶりにライトタックルを使って、アベレージサイズのバスを数匹獲っていた。

　カズミも負けじと釣っている。

「もうデカバス縛りはやめたの？」とカズミが聞く。

「ちょっと疲れた。今日は数釣りを楽しむよ」と美沙希が答える。

　ふたりの前の水面はキラキラと光っている。

　空は明るく、太陽が輝いている。

「来た！」と美沙希が言い、彼女のバスロッドが半月に曲がった。

あ・と・が・き

　これにて第１部完結です。

　百合は女性の同性愛のことですが、それを題材とした作品の場合は、恋愛、恋愛に近い友情、あるいはもっといろいろな形の女性同士の関係を描いたものを指すようです。

　日本にはさまざまな百合小説、百合漫画、百合アニメがあって、自分も多くの百合作品を愛好していることを最近自覚しました。

　で、釣り百合小説を書いてしまいました。

　最初は釣りを好きなふたりの女の子のことを書こう、というアイデアしかなく、なんとなく始めました。

　これは私の悪い癖なのです。きちんとプロットを書いて、キャラクター設定を決めて、ある程度書きためてから公開すればよいのでしょうが、第２話まで書いたら、この小説は読んでもらえるだろうか、反応を知りたい、と思って公開してしまいました。

　それからはもう泥縄です。

　書きながら考え、連載を続けました。睡眠時間を削って書きました。そして、毎日懸命に連載を続けてきました。

　ふたりの関係がどのようになるのかつかめなくて悩みました。

　破綻するのか、くっつくのか、どうすべきなのかわかりませんでした。

　カズミは女性同性愛者です。でも美沙希は異性を愛する性的多数派と考えていたので、途中までは破局が必然かと思っていました。

　でもハッピーエンドを探しました。せめて少しは明るい完結にできないものかと。

　結末はお読みいただいたとおりです。

　美沙希はクエスチョニングになりました。

　この後どうなるのか。可能性は無限に広がっています。

　というわけで、オープンエンドです。ちょっとハッピーエンドの匂いがするオープンエンドでしょうか。

　稚拙な作品をここまで読んでいただいた方に多大なる感謝を。

　どうもありがとうございました。

　第２部につづきます。

　第２部がきちんと完結するか、いまから心配です……。