第18話 特定外来生物
「キャットフィッシュ? 猫魚?」
「正式名称はチャネルキャットフィッシュ。アメリカナマズとも呼ばれてるわね。ひげが生えてるから、キャットフィッシュっていう名前なんだと思う」
「ナマズなんだ……」
「大きいのが釣れるから、面白いわよ。1メートル以上にも成長するの。私はこの港で70センチのを釣ったことがあるわ。すごく重かった」
「アメリカナマズなんて、この湖にいるなんて知らなかったよ」
「キャットフィッシュはカスミガウラ水系で大増殖してるわよ。もともとは1970年代に食用としてアメリカから移殖されたの。養殖池から台風のときに湖に流出して、自然繁殖したらしいわ。生態系に影響を及ぼすほど増殖したから、2005年に特定外来生物に指定されて、今では害魚として、捕獲されたら肥料にされるようになっているわ」
「肥料……。憐れね」
「ブラックバスも同じよ。1925年に食用目的でアメリカから持ち込まれて、芦ノ湖に放流されたの。でもやっぱり生態系に悪影響があるとされて、特定外来生物に指定されたわ。魚に罪はないのにね。つくづく人間って勝手だと思う」
「そうなんだ。知らなかった……」
「私にとっては、キャットもバスも釣りの対象魚よ。釣りましょう、キャットフィッシュを!」
「うん」
「でかいのが釣れるかもしれないから、ドラグをゆるめておいてね」
「ドラグって何?」
「ドラグっていうのは、釣り糸に強い負荷がかかったときに、糸を送り出す機能のことだよ。たとえば、カズミのリールには8ポンドのナイロンラインが巻いてあるんだけど、約4キログラムの負荷がかかったら、ラインが切れてしまうんだ。だから、それだけの負荷がかかる前に糸が出ていくように調整しておくの」
「なんかむずかしいね。やり方を教えて」
「簡単だよ。このスプール(糸巻き部)の前についているつまみを回して調整するの。反時計回りでドラグがゆるくなっていくから。強すぎず、ゆるすぎずに調整するんだよ。ラインを引っ張ってみて、よい加減だと思ったらオッケー!」
「うーん。よい加減というのがわからない……」
「じゃあ、最初は私がやってあげる。えーっと、こんなぐらいでいいかな。適当でいいんだよ」
「ありがとう」
「じゃあ釣ってみよう! キャットフィッシュはテトラのすぐそばにいるから、ちょい投げでいいよ。そのへんに餌を落としてみて」
「わかった」
カズミはアンダースローで仕掛けをポチャンと投げた。
彼女はまだキャットフィッシュがどんな姿をした魚かも知らない。
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