日常18 初夜翌日。嫁(旦那?)の片方のカミングアウト
「………………朝か」
目が覚めたら、朝じゃった。
隣には、全裸の美少女二人が気持ちよさそうに眠っていた。
なるほど……これが、俗に言う朝チュンと言う奴か。
もぞもぞと上半身だけ起き上がると、自分自身も何も着ていないことに気づく……というか思い出す。
「ふっ……なるほど……こやつらにとって、儂は本当に嫁側なんじゃな……」
遠い目をして儚い笑みを浮かべながら、儂は呟く。
昨日、役所に提出しに言った後、儂はひたすら、襲われた。
おかげで途中はなんかもう、ヤバかった。まず、腰が砕けて動けなくなり、そんな状態だと言うのに、二人は容赦なく儂を攻めてくるし……。
あれはもう、ほとんど拷問じゃろ。
一応夕食は食べた。ただ、儂はまったく動けなかったので、結果的に二人に食べさせてもらったんじゃが……まあ、その後も、ね。襲われましたよ。
「「続き!」」
とか言われて。
そうか、儂が旦那などではなく、あっちの二人が旦那じゃったのか……。
昨日の一件で儂は思った。
――あの二人には絶対勝てないな――
と。
まず、女としての期間が長いと言う時点でそっち方面には勝てんし、なんかあの二人……というか、瑞姫の方地味に力強いし……いや、美穂も強いんじゃが……。
それに儂、幼女だから色々と弱いんじゃよなぁ。
男と違って、賢者にはならんから余計にきつかったなぁ……。
儂、死ぬかと思ったぞ。マジで。
快楽で死ぬとか絶対嫌じゃ。
儂は普通に老衰で死にたい。
これはマジ勘弁じゃな。
…………ま、まあ、その、気持ちよかった……んじゃがな。
「……ともあれ、起きて朝食でも作るかの……」
なんか、体の至る所が痛いが、まあ……仕方ないということで。
「おはよ~……」
「おはようございます……」
「おはようじゃ、二人とも。ほれ、そろそろ朝食ができるぞ。顔を洗ってこい」
朝食を作っていると、二人が眠そうな顔で起きて来た。
しかし、どこかつやつやとしているような気もする。
……儂はちょっとげっそりじゃったけどな。
「……ん? って、ま、まひろ!?」
「なんじゃ?」
「そ、その恰好は……」
「む? あぁ、これか? なんか面倒じゃったので、起きてそのままエプロンを着けたが……変か?」
「変って言うかそれ……裸エプロンじゃない!」
「あぁ、そう言えばそうじゃな。まあ、朝食と弁当を作ったらすぐに着替えて来るから、問題なしじゃ」
「問題なしって……あんた、恥ずかしくないの?」
「何を今更。昨日のあれに比べたら、こんなの可愛いもんじゃ。というか、あれだけ恥ずかしい姿を見られておいて、今更裸エプロン程度で恥ずかしがるような儂ではない」
もう一つ言えば、やはり自分から見せているから恥ずかしくない、と言うのもある。
ふふ、こうすれば恥ずかしくないんじゃな、やはり。
これがわかっただけでも、儲けもんじゃ。
……何を儲けたかはさておき。
「ち、小さい女の子の……裸エプロン……!」
「む? どうした、瑞姫? ちょっとハァハァしておるぞ」
「あ、い、いえ! お気になさらず! ただちょっと、今のまひろちゃんが可愛くてエッチだったので、つい……」
「そうか。……ま、別に見られるのは構わん。ほれ、さっさと顔を洗ってくるがよい」
「了解」
「はーい!」
うむうむ。これで良しじゃ。
「……美味しいわね、これ」
「美味しいです!」
「そうか、それはよかった。あ、白米のおかわりが欲しかったら言えばよそうからな」
あれじゃな。自分が作った料理を食べてもらって、美味しいと言われるのはすごく嬉しいことじゃな。
なんと言うか、胸にジーンと来る。
「やっぱあんた、嫁属性よね」
「ですね。まひろちゃんはやっぱり、お嫁さんです」
「……まぁ、昨日のことを鑑みても、儂は嫁寄りじゃろうが……」
「昨日はお楽しみだったわね」
少し苦い表情を浮かべながら言うと、美穂が少しニヤニヤとした表情を浮かべながらそうふざけて来た。
「そのセリフは、第三者が言うことじゃからな!? 間違っても、当事者が言うことではないぞ!?」
「じゃあ……昨日は気持ちよかったわね」
「まあ……それなら幾分かマシ、かの?」
「昨日はヘロヘロでトロトロでしたね」
「瑞姫、それはアウトじゃ! 色々と!」
それ、昨日の儂の状態じゃから!
二人がかかりで攻められすぎて、ベッドの上でぐったりしておった儂じゃから!
あれは、本当に酷かったからな!
「まあいいじゃない。面白い経験ができたわけだし」
「儂、無理やり襲われたようなものだったんじゃが……しかも、軽く縛られたし」
「だって、あんた逃げようとするんだもの。往生際悪く。それなら、軽く拘束するでしょ?」
「儂にそんなアブノーマルな性癖はないからな!?」
「そうですか? 拘束されている時のまひろちゃんって、ちょっとこう……下の方が――」
「やめろぉ! それ以上言うでない! 儂が羞恥心で死んでしまうぞ!?」
「まあいいじゃない。まひろはMだったということで」
「よくないわっ!」
くそぅ、なんだかた手玉に取られている気分じゃ……いや、実際そうなのか?
はぁ……。
「おぬしらは容赦なさすぎじゃ。普通、告白して入籍したその日にあそこまでするか!? あと、儂女になってからそこまで日も経っておらんというのに、あ、あんなことまで……!」
「まひろが可愛くてつい……」
「縛られている幼い女の子を見てつい……」
「……おぬしらの方がアブノーマルな気がするぞ、儂」
と言うか今、瑞姫のセリフおかしくなかったか?
……まさかとは思うんじゃが、こやつ……ロリで始まってコンで終わるようなあれじゃなかろうな? 変態紳士とも言うが……。
ま、まあ、気のせいじゃろ。
そう言うことにしておこう。
「でもあれよね。昨日のあれって、初夜ってことでいいのかしら?」
「世間一般で言う初夜とは全くの別物だった気がするがな!」
ただ儂が一方的に可愛がられただけじゃぞ、あれ。
「ですが、美穂さんはともかく、わたしのプロポーズも受け入れてもらえるとは思いませんでした」
「どうした、突然。というか、今の話から話題が転換しすぎじゃろ」
「同じことですよ。……まひろちゃんに昨日告白はされましたけど、正直受け入れられるとは思っていなかったのですよ、わたし」
「じゃろうな。むしろ、儂の方が思ったくらいじゃ。なぜこやつは、会って日が浅い儂に好意を寄せているんじゃろうな? と」
「そう言えばそうよね。春休み中、私と瑞姫でよく遊びに来ていた時とかなの?」
「いえ、本当はもっと前だったりするのですけど……」
「前? となると、あれか? ショッピングモールで会った時とか……」
「いえ、それよりももっと前です」
「……マジでか? 儂、どこかで会ったことがあるのか?」
「はい。去年に」
マジか。
儂ら、一体どこで会ったんじゃ?
会った記憶がいまいちないんじゃが……。
「まあでも、その時のまひろちゃんは何と言いますか……寝ぼけているような状態だったので……」
「寝ぼけて? 儂、何かしたのか?」
「そうですね……とりあえず、助けてくれた、とだけ」
「まあ、こいつはお人好しだしね。誰かを助けていても不思議じゃないわ」
「儂、そんなにお人好しかの?」
「お人好しよ。だってあんた、たまに街で困った人を助けたりしてるじゃない。なかなか横断歩道を渡れないお婆さんを助けたり、何かを探していた大人の女性の手助けをしたり、クレーマーの対応で困っていたファミレスの男性店員を助けたりとか、色々としてるじゃない」
「……おぬし、よく知っておるな」
「まあ、色々と」
こやつ、もしや見ておったのか?
なんか儂自身の事、この二人に結構知られておるような気がしてならないんじゃが……。瑞姫もなんか儂のプロフィール知っておったし。
あれは謎じゃった。
「やっぱり、優しい方なんですね、まひろちゃんは」
「そうでもないぞ。助けたのは気まぐれじゃからな。本来なら、めんどくさがって絶対にやらんことじゃ」
「の割には、去年の学園祭とか率先して手助けとかしていたと思うんだけど?」
「……それは、ほら、あれじゃよ。学園祭のような祭りごとが好きじゃからな、儂は。ならば、率先してやるもんじゃろ? 儂はな、楽しいことが好きなんじゃ」
「あんたって、ほんっと矛盾してるわよね」
「違う。儂はただ、自由気ままに生きておるだけじゃ」
なので、矛盾しているわけではない。
矛盾と言うのはあれじゃ。『俺、目立ちたくないのに、ドラゴンとか倒して目立っちまったぜ。あーあ、やーだなー』みたいな感じの奴のことを言うんじゃ。
ならなぜ、ドラゴンを倒した、とか思うがな。
「でもわたし、そう言う方は憧れます」
「えー? こいつみたいなのが?」
「おぬし、本当に儂が好きなんじゃよな?」
「当然じゃない。じゃなきゃ、あんなことしないわよ」
「……それもそうか。それで、なぜじゃ? 瑞姫」
「わたしはお父様がグループ会社の会長という肩書だったので、かなり行動を制限されていましたので……。これをしなさい、とか、これはしてはいけない、そう言われることばかりだったでした。つまり、自由が少なかったのです」
「やはり、金持ちは大変なんじゃな」
「そう、ですね。わたしも自由が欲しかったので、去年の九月くらいでしょうか。つい、家出をしてしまったのです」
「なかなかお転婆なんじゃな、おぬし」
家出とはのう。
しかも、かなり大きなグループ会社の会長の娘が。
思い切りが良すぎるのではないか? こやつ。
「そしたら、途中でお父様に見つかってしまいまして……。わたしの腕を掴んで連れて帰ろうとしたのです」
「ほう。それはまた、なんとも物語でよくある展開じゃな」
特にラブコメ系で。
「その時でした。突然高校生くらいの男性の方が割って入ってきたのです。その方は、お父様の手を掴むと『無理矢理はいかんじゃろう、無理矢理は……』と、非難するような口振りでお父様に直接言ったのです」
「……ねぇ、瑞姫。私、すっごい聞いたことがあるような話し方なんだけど、その男」
「儂以外にもいるんじゃなぁ、そのような者が」
「いや、普通いるわけないでしょ。てか、あんたでしょ、どう考えても」
「いやしかし、そんなことあったか……?」
あったような、なかったような気がするが……どうじゃったか。
「あの、お話を続けても?」
「うむ、構わんぞ」
「はい、では。……それで、ですね。わたしのお父様は、何と言いますか……強面と呼ばれるような方でして、顔に大きな傷があるのです。あと、筋肉質でがっしりとした体形でもあります。昔、ツキノワグマと格闘して勝利した、という話も聞いています」
「それ人間なの?」
「人間です」
熊と戦って勝つ人間かぁ……すごい存在がいるもんじゃのう。
まるで、マンガやラノベのキャラみたいじゃな。
「そんなお父様ですから、当然正面から自分の考えを言う人がいなかったのです。そんな時、先ほど割って入ってきた男性の方が正面から堂々と言ってくれたのです。わたしの事情を聞いて、そこから出したセリフが『親が束縛とかダメじゃろ。絶対死ぬぞ? 自殺するぞ? あと、儂は別に親になったことはないからあれじゃが、そう束縛ばかりしておると、嫌われるからの? じゃから現に、こうして家出をされておるわけじゃし。ある程度の躾も大事じゃが、やはりのびのびと過ごせる環境でなければ、潰れてしまうぞ? まあ、儂は一般人じゃし、社会を知らぬ子供じゃが、それだけはわかる。というかじゃな、この状況が面倒じゃないか? 家出をして、わざわざ探しに行くの、めんどくはないか? 父親であるおぬしが変に束縛しすぎたから、こうなったわけじゃからな。なので、自由に過ごせる環境にするとよいと思うぞ、儂的に。あと、この辺でこうも交通規制をかけたり、大勢で動き回られるのは、うざいし近所迷惑じゃ。儂、この近くの家の住人なんじゃが、これじゃおちおち寝てもいられんわ。静かにしてほしいんじゃが! 儂は寝たいんじゃ! こういうことは、よそでやってくれ!』と」
「そんな長ったらしいセリフ、よく覚えてたわね!?」
「かっこ可愛かったもので覚えちゃいました」
「可愛いってどこが!?」
「まひろちゃんって、男性の時から可愛かったものですから。わたしとしましては、『もっと小さい女の子だったら……』とずっと思っていました」
「って、やっぱりまひろなのね!」
そうか、今のセリフを言ったのは儂か。
……しかし、そんなことはあったか……って、む? そう言えば、そんなようなことがあったような気がするが……あ、もしや。
「瑞姫。それはあれか? 儂の家の近くで、大勢の黒スーツを着た男たちに追いかけられ、武人みたいな大柄の男に腕を掴まれて嫌々していた時のことか?」
「そうですそうです! あの時腕を掴まれていたのはわたしです!」
「あぁ! そう言えばそんなことあったのう!」
思い出した思い出した。
たしか、儂が気持ちよく眠っていた時に、外からあまりにもうるさすぎる騒ぎがあってそれを止めに行った時じゃな。
なるほど、あの時か。
「なるほどのう。じゃからおぬし、儂を知っていたんじゃな?」
「はい。本当はもっと早くお礼を伝えるべきだったのですけど……。あの時、まひろちゃんがお父様に言ってくださったおかげで、お父様は反省し、今は自由に過ごせるようにしてくださっています本当に、ありがとうございました」
「気にするでない。儂はただ、眠かっただけじゃからな!」
「あんたの基準、やっぱおかしいでしょ」
「何を言う、睡眠は大事じゃ」
それ以上に大事な物なんぞ、儂は知らん。
「……そう言えば、その家出って何が原因だったの?」
「えーっと、小さな女の子が攻められるような内容の薄い本をですね、お父様が『こ、こんなものを読んでいたのか!? ゆ、許さん! 許さんぞ―――――――――!』と言いまして……わたしもその怒ってしまったと言いますか……。あと、わたしの恋愛的嗜好も否定されてしまったので、家出しました」
「お、思ったよりしょうもないわね!?」
たしかに。
と言うかむしろ、父親の方がある意味では正しくないか?
……あと、こやつやはり、ロリコンか何かじゃろ。
そんな本を持っている時点で、ロリコンか何かじゃろ。
「……一応訊くんだけど、瑞姫の恋愛的嗜好って何?」
「えーっとですね、わたし実は……まひろちゃんのような女の子が好みなのです!」
「「……は?」」
突然のカミングアウトに、儂と美穂の二人は揃って呆けた声を漏らした。
「だ、だって可愛らしいじゃないですかぁ! 可愛らしい顔立ちに、発展途上の体! ちっちゃくてぷにぷにな手に、すべすべのおみ足! まひろちゃんじゃなくて、まひろさんの時は『うぅ、あの女性寄りの顔立ちに、長い黒髪……可愛らしいお顔立ちなのに、小さな女の子じゃないのが惜しいのです!』と思ったくらいなんです! そしたら、まひろさんが『TSF症候群』を発症させて、とっっっっっっっっても! 可愛らしい女の子になっているではないですか! しかも、わたしの好みピッタリだったのです! それで、一目惚れしてしまいまして……。あと、以前助けていただいたことも相まって、余計に……」
……あぁ、なるほど。理解した。
儂が時たま感じておった、言い表すことのできない何かは、これじゃったか。
つまりこやつは……
「「ロリコンってことかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
ある意味、衝撃の事実だった。
儂の嫁(旦那?)癖強すぎじゃろ!
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