第2話 もしかして異世界
私は一人、一面赤土の荒野にいた…。
数秒前まで私は確かに神戸三宮の街中にいたのだ…。
いや……いた筈だ!
私の理解は全く追い付いて来なかった。
しかし、現実では砂の混ざった乾いた風が私の頬を撫でた。
「何これ!!
ええ!!
どうなってるの!?」
もしかして…。
これって…いわゆる異世界転移とか??
いやいやいやいやいや!!
落ち着きなさい恋桜奈(れおな)!!
落ち着くのよ!
そんな訳ないじゃない!
あれはフィクション!ファンタジー世界よ!
現実世界でそんな事ある訳ないじゃないのよ!
その時、背後から私を覆う大きな影に気付いた。
後ろを振り向くとアフリカゾウ並みに巨大な体躯に大きな翼の生えたトカゲの様な生き物がいた…。
「何これ……??
これって、もしかしてドラゴン…?」
そのドラゴンは大きな口を開けて襲い掛かって来た。
「きゃああああ!!!」
私は全力で走った。
世界記録を更新するぐらいのスピードで走った。
すると向こうに人が一人が隠れる事が出来るくらいの岩陰が見えた。
そして私は何とか岩の隙間に滑り込む事が出来た。
その後、ドラゴンは暫くあたりをウロウロしていたが、やがて諦め去って行った。
はぁ……。
助かった。
これはもう信じる他ないかも知れない…。
私は今、異世界にいるのだ。
あの時、少女と出会ってあの本に触れた途端…、ああ分んない!
今は頭が混乱してて良く分からない。
しかし、これからどうしよう…。
あんなドラゴンが外にいるんじゃ、迂闊にここから出る事すら出来ない。
岩陰の隙間から周囲を見渡すと、さっきのドラゴンの他にも大きな翼に鳥の頭を持った体がライオンの様な魔物もいた。
あれって、よくゲームとかで出てくるグリフィンって奴かな?
ドラゴンだけじゃないのね…あんな奴らがゴロゴロいたらここから出るに出られないじゃない…。
そして一面砂に覆われた、この赤土の荒野。
どちらにしても、ここでじっとしていても水も食べ物のない状況では、そう長くは続かない事は明白だった。
何とか解決方法を考えないと駄目だ。
でも、ちょっとまってよ…。
もし、ここがゲームやアニメで出てくる様な異世界だとしたら、もしかして魔法とか使えるんじゃないのかな??
だとすると、お約束の展開で『私超強い』の感じになるかも知れない!
そういえば転移する前に、あの少女が持っていたカバンに魔法の杖が入っていたはず!
「あった!」
杖に何かしらの力を込めれば!
私は杖の先に目一杯力を込めるイメージでやってみた。
………。
「はい!何も出ない!」
もしかして異世界に来ても全く無双できないパターンかな…。
もしそうだとしたら、ドラゴンとかがいるこんな危険な世界で、どう生きて行けば良いっていうのよ…。
私は他にカバンの中身で他に何か使える物がないか調べてみた。
硬貨が何枚か入っていた。
これは、もし町や村まで行く事が出来れば使えるかも知れない。
果たして人がいる所まで辿り着く事が出来ればの話だけど…。
あと見た事ない小物類が色々入っていた。
魔法陣の刻印された小瓶。
缶コーヒーくらいの大きさだ。
瓶の蓋を開けてみると水が溢れ出した!
「うわっ!何これ」
更に不思議だったのは明らかに内容量を超える水量が出続けているのに全く尽きる気配がない。
一体どんな構造なの?
正に異世界アイテムって感じ。
因みに瓶の底に【天才大魔道士リッキーリード作】と記載されてある。
他にはスマホぐらいの大きさに同様に魔法陣の刻印されたプレートの様な物。
触ると盤面にいくつかの文字が浮かび上がった。
【保存食・調理器具・寝具・装備一式…】等の10項目ぐらいだった。
文字にタッチするとプレートから食料品が出現した!
「何…この何でもあり感…。
リアル三次元スマホってところかしら…。
物体保存まで出来るなんて。
操作方法もスマホそっくりだ…。
そして裏面にさっきと同じ
【天才大魔道士リッキーリード作】の文字が…。
いちいち自己主張の激しい人だな…。
いや、この世界なりの著作権対策とかかな(笑)」
でも、お陰で飲み水と食料には困らなくてすみそうだ。
ゆっくりと対策を考える余裕も生まれそうだ。
そして例の本だ…。
私がこの世界に飛ばされたきっかけになったかも知れないこの本…。
内容はというとタイトルにある通り、リッキーリードという人物とこの世界で起こった歴史が細かく記載されている歴史書の様だ。
所々に線が引かれてあり【この記載には誤りがある。事実は……。(本人情報)】との謎の記載が複数あった。
しかし、変な話だ。
この本では彼が世界で活躍したのは約200年も前の事でその後、彼はこの世界から消滅したと書かれている。
200年後に出版された本に、本人記載なんて何かの冗談だろうか?
やがて本を読み進める内にあたりは日が落ち暗くなっていた。
私は例のプレートからランプと寝袋を出して読書を再開した。
すると本文が終わるとページが追加されてあり、そこには手書きで【すぐに使える初級魔法】というタイトルで10種類程の呪文と効果が書かれていた。
「これよこれ!
呪文があったら、もしかしたら
魔法が使えるかも知れない!
ええと、これなんかどうだろ!
名前からして初級っぽいし…」
私は一度、外に出て呪文を詠唱した。
『ファイヤーボール!』
私の体中から光があふれ、腕を伝わり杖の先から火球が発射された!
≪ボン!!!≫
「やった!!
出来た!!
これならもしかしたら
さっきの魔物達とも戦えるかも!」
そして、火球の光が消えると日も落ちあたりは真っ暗になっていたので、今夜は残りの呪文に目を通して翌朝出発する事にし、この日はもう眠る事にした。
こうして私、立花 恋桜奈(たちばな れおな)の異世界生活はスタートしたのだった。
To Be Continued…
:登場人物:
立花 恋桜奈(たちばな れおな):
身長 175センチ
17歳
どうやら異世界に転移してしまったらしい。
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