プリズムの魔 超獣《コスモジョーズ》登場!

第一章『無気力な男の独白 SYNDROME』

 薄明りに細かいほこりが舞う。

 黄色いカーテンの部屋に積み上げられた本やゴミの山。

 薄い壁から隣の家のTVの音がする。どうやらつけっぱなしらしい。頭をずらし仰向けになる。

 天井からぶらさがる紐をぼんやりとながめていると、いつのまにかTVの音は止まっていた。その代わりどこかから電車の走る音がする。

 この付近に線路はあっただろうかと疑問に思い窓の外を見ようかと思ったがやめた。起き上がるのが面倒だ。

 いつから、こうしているのだろう。

 いつまで、こうしているのだろう。

 どうでもいい。

 寝返り、うつ伏せになると頭が痛かった。

 枕にアゴを乗せると重い頭が沈み込んでいくようだ。

 頭が、重い。

 内側にみっしり隙間なく鉄でも詰められているようだ。

 目の前の畳に飲みかけの酒瓶が置いてある。

 中身は気化していて水滴がビン内を伝う。

 午後のカーテンより漏れる陽光が七色に分解され虹となり、ガラスで揺らめく。

 ……ああ、きれいだ。

 呆けた脳で虹色の露に見入っていた。

 ……つまりは、この光なんだな。

 滴が伝った後はプリズムの小道となる。

 滴る跡の虹色がゆらゆらと揺らめいた。

 光はゆっくり収束していき人の形になる。

 幻覚なのか。

 少しだけ覚醒して顔を空き瓶に近づけた。

「はじめまして」

 声まで聞こえた。幻聴か。

 考えるのも面倒で、ただぼんやりと見つめる。

 空き瓶の中で虹色の小人が無駄に恭しくひざを折り、ひざまずいた。小人は仰々しく頭を垂れ名乗る。

「私のことは『せらえの』とでもお呼びください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る