閃きの町 情報生命体『鬼』登場!
一章『光より黒手 SHINING』
あなたとあなたと、あなたもわたし
みんないっしょで、みんないい
わたしのひとみの、あなたもわたし
わたしのひかりが、うつりこみ
あなたのひとみに、わたしがうつる
あらたなわたしが、うまれてく
――――…………。
最近よく聞く歌がいやに耳に入る。
煌びやかな町の光の中、人ごみを女子高生が一人歩いていく。
スマホをいじる。ツイッターを立ち上げて、ため息をついてすぐ閉じる。
周辺には最近台頭してきたらしいミュージシャンの曲が溢れ、路上では最近のし上がって来たイラストレーターたちが画集を販売している。
少しのぞいてみるとどこかで見たようなポップなキャラクターが描かれていた。
たしか、このキャラはCMに最近起用された……。
画集を戻して再びふらふらと歩く。
頭が蕩けるくらいの光の洪水。
練り歩く人の群れ。
誰も彼もが有名人。
このどうしようもないほどの人の群れは、この町にいる『鬼』を求めてやってきたのだろう。
自分と同じように。
時既に深夜。しかし全方向から照明が向いているので暗くはない。
いや、暗い場所がある。
恐らく昔からあったがゆえに景色から隔離されている電柱の影。
その影に光から隠れるようにして、誰か立っている。
黒い。
かろうじて人の輪郭に見えるくらいで顔も影に塗り潰されている。
「あ」
ついに見つけた。
だらりと長い腕を垂らした影の頭。
にょきりと二本の角が生えた。
鬼だ。
とうとう見つけた。
手を伸ばし、身を乗り出して。
べたり。
その瞬間、首筋から廻された黒い腕。
首に鬼がもう一人飛びついたのだ。
気づけば、囲まれている。
あちこちの看板の背後から。
ビルの薄暗い入口から。
群れる人々の袖の中から。
あらゆる暗闇から鬼がやって来て、女子高生をみっしりと囲む。
四方八方から小さな手が伸びてきた。
次々と女子高生の体に張り付いていく。
最初に首にぶらさがったのはどの鬼だろうか。
わからない。視界の至る所に角の生えた鬼の顔。
しがみつく手は痛くはない。ただとても苦しい。
とても重いし、息苦しい。
助けて、という声が喉が押さえつけられ出ない。
しばらくは鬼を振りほどこうと弱々しく抵抗を続けていたが次第に足元から順に力がぬけて、崩れ落ちる。
「ひぅ」
小さな黒い手に埋もれて遠くなる意識の中、吐息が漏れた。
彼女、
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