第63話 竜との出会い



「竜がどこにいるか、アンは知っていたの?」


僕の頭に浮かんだ疑問と同じことを殿下がアンに尋ねた。


「いえ、知りませんでした。」


「では、どうやって竜と接触したんだ?」


今度は父が尋ねた。


「本に記された内容から、祈りは竜に届くことを知りました。

なので、竜と話したいという祈りを捧げました。」


祈りって案外便利そう。


「すると声が聞こえ、竜と会話することが出来ました。」




「呼んだか?」


目を閉じ、手を組み、祈りを捧げると頭の中に声が響いた。

そのまま頭の中で返事をした。


「お呼びしました。

ロヴェイユ王国を加護して下さっている竜様でしょうか?」


「そうだ。

名はロヴェイユと言う。」


ロヴェイユ、王国の名、王族の名は竜から頂いた物だったようだ。


「ロヴェイユ様、私は現聖女のアン・リディア・フェインと申します。」


「アン、お前のことは知っている。

なぜ我を呼んだのだ。」


まだ起きてもいない未来のことを話して、竜は聞いてくれるだろうか、、、。

何を伝えれば良いのかしら、、、。


「用があって呼んだのだろう。

良い、話せ。」


低く、太い声だが、威圧感はない。

私の話を受け入れようとしてくれているのだろう、、、。


「信じて頂けるかわかりませんが、未来に起きたことをお話しさせて頂きたいです。」


ロヴェイユ様は私の話を静かに聞いて下さり、次に言葉を発せられたのは話が全て終わってからでした。


「アン、私はルイーゼにこの国を加護することを誓った。

それと同時に、代々続いていく聖女を守ることを誓っている。

我は毎日自分の為に祈りを捧げる聖女が大切だ。

聖女を傷つける者は誰一人として許しはしない。」


「大変嬉しく、光栄に思います。

ですが、私は自分のために他の方々が傷つく姿を見るのは自分が傷つくことよりも辛いのです。」


私の言葉に、ロヴェイユ様は考え込む。


「アンは、他の者が傷つくことを望まない。

自分よりも他の者が大切だと言うのだな。」


「はい。」


「そうか、、、。

アン、我の力が必要な時はいつでも呼べ。

アンの声には応えよう。」


理解して下さったのかしら?


「ありがとうございます。

よろしくお願い致しますわ。」


そう言うと、もう声は返って来なかった。


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