第32話 サラとエミリー



「サラ・ジェシカ・ルーナと申します。

皆様、よろしくお願い致します。」


クラスメイトたちの前で挨拶をする。

バレるかもしれないと思うと、手に汗が滲んでくる。

教員に促され、サラのために空けられている席へと歩みを進める。

隣に座るのはエミリーだ。


「今日からお隣ですね。

よろしくお願い致しますわ。」


必死で女性らしい声、言葉遣いを心がける。

ここでバレたら何もかもが終わる。


「エミリー・グレース・エバンズ。

エミリーで良いわ。」


ん?いつものブリブリ声はどうした?

ぶりっ子してるのは殿下やアンの前だけでこれが素なのか。


「エミリー様!

仲良くして下さいませ!」


印象を良くするため、笑顔で返事をしておいた。




午前中の授業が終わり、ここからが僕のミッションの肝心なところだ。


「エミリー様、昼食ご一緒してもよろしいですか?」


エミリーと仲良くなるため、ランチを共にすることにした。


「私と?ランチを?」


不思議そうに僕を見ている。

なぜだ!!!どこか怪しかったか?


「ぜひエミリー様とご一緒したいのですが、ご迷惑でしょうか?」


「いえ、少し驚いただけよ。

食堂でいいかしら?」


僕とエミリーは食堂へと向かった。

僕が席に座り、エミリーがオススメのランチを二人分取りに行ってくれた。

そこでばったり殿下とロン様、アンに出会ってしまった。


「殿下、この度は私の留学を快く迎え入れて頂きありがとうございます。」


サラになりきって挨拶する。


「サラ様の留学にロヴェイユ王国を選んで頂いたこと、光栄に思います。」


殿下もサラとして扱ってくれる。


「こちらロヴェイユ王国の聖女で、私の婚約者のアンです。」


「アン・リディア・フェインと申します。」


挨拶する姿も女神!!!!!

サラが僕だとは気づいていないようだ。

実妹でも見破れないとは、王家の技術は凄すぎる。


「サラ・ジェシカ・ルーナです。

よろしくお願い致しますわ、アン様。」


サラとしてにこやかに挨拶をしておく。


「殿下〜!!!

お会いしたかったですう!」


エミリーが戻ってきた。

いつものブリブリとした話し方だ。


「エミリー、サラ様と親しくなったんだね?

学園のことを色々と伝えて貰えるかな?

じゃあ僕らはこれで!

失礼致します、サラ様。」


殿下はエミリーと僕にスラスラと話し、すぐに行ってしまった。


「あーあ、行っちゃった、、、。

まあ、いいか!

サラ様、こちらが私のオススメよ!」


エミリーが渡してきたのはフルーツサンドだった。

みかんやいちごがクリームと共にパンに挟んである。


「平民はフルーツサンドがお好きらしい。」


「姫様にフルーツサンド?

もっと良いものをお出ししたらいいのに。」


「やっぱり平民は味がわからないのか?」


周りから嫌味がたくさん聞こえてくる。

なるほど、平民だからといって貴族たちにこんな扱いを受けているのか。

エミリー嬢が気にしている様子はない、が。


「まあ!どうして私が甘い物が好きだとお気づきになられたの?

ありがとうございます!エミリー様!」


大袈裟に喜んでフルーツサンドにかぶりついた。

周りもエミリーも驚いている。

姫様はナイフとフォークで食べると思うよね。


「私の身分よりも、私個人を見てくださるエミリー様と友人になれて嬉しく思います。

自分の力で偉くなったわけでもないのに、身分で差別する方も多いですからね!!!」


周りに聞こえるようにわざと大きな声で言った。

スッキリした!!!!


「ふふふ、ははは!!!!

サラ様って変わったお姫様なのね!!!」


エミリーは大笑いしてた。


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