第30話 最悪のミッション


次の日、また父の書斎へと呼ばれた。


「あの日、殿下は仕立て屋の主人からドレスに合う装飾品を送ったらどうかと提案されたらしい。

あの未来があるので警戒はしたが、エミリー嬢と共に来ていなかったことから油断していたとおっしゃっていた。

アクセサリーを選んでいると、エミリー嬢が入店してきたので挨拶だけ交わした。

主人には急用が出来たと言ってすぐに退店したそうだ。」


「その姿を見られていたのですね。」


「教会と繋がっている貴族は多い。

たまたま見られていた可能性もあるが、教会側が噂を流した可能性もある。」


エミリーが考えたのか、教会が考えたのかはわからないがよく練られた作戦だ。


「今日の本題だが、殿下と相談して決めたことがある。

新学期になると、学園内でアンを守れるのは殿下とマリエルだけになってしまう。

殿下はお忙しい方なので、常にアンのそばにいるのはマリエルだけだ。

そこで、お前にもう一度学園に入ってもらう。」


「え???

もう一度学園に???」


僕は卒業している身だ。

卒業生が学園に通うのは不可能だ。


「エドワード・リー・フェインがもう一度通うというのは不可能だ。

お前は学園内では別人になってもらう。

殿下と一部の教員にしか伝えない。」


「いや、別人って!

卒業したのは昨年のことです。

関わりのある後輩も少ないですが居ますし、教員の方々も僕を覚えているのでは?」


いくら別人だと言い張っても無理があるだろう。


「お前には関係国からのお姫様、留学生として学園通ってもらう。

名前はサラ・ジェシカ・ルーナだ。」


「それは女性の名前では?」


「そうだ。

お前は女装して女子生徒として学園に通うんだよ。」


女装、、、????

父の言葉に体が完全に固まった。


「おーい?エドワード?」


父が僕の顔の前で手をヒラヒラとしていて、気がつく。


「いやいやいや!!??

バレるって!絶対にバレるって!

特にアンとマリエルにはバレバレだよ!!??」


「お前はアンには近づかなくて良い。

お前が近づくのはエミリー嬢だ。」


まじで何言ってんだこの親父!!!!


「お前にはエミリー嬢の親友となってもらう。

潜入期間は1ヶ月ほどだ。

1ヶ月で彼女の親友となり、目的、学園内の協力者、聖女の痣について聞き出すんだ。」


1ヶ月?

短すぎるだろ!!!!!!


「でも、、、もしバレたら伯爵家にとっても最悪の事態になるのでは?」


そうだ!伯爵家の御子息が女装して学園に潜入なんてことになったらまずいはず!!!


「ああ、それは心配ない。

殿下も俺もお前が女装して学園に潜入していたことは知らないことにする。

女装してまで妹に付き纏うシスコンには家を出てもらうことになるが、、、。

まあ、殿下の計らいで悪い生活にはならない!大丈夫だ!

だが俺も困るからバレるなよ?」


「最悪だーー!!!!!!!」


僕の叫び声が屋敷に響き渡る。

父は叫ぶ息子を見て大笑いしている。

こういう人なのだ。


「この国の未来とアンのためだ、励め!

明後日から大教会へ付き添った後、王城へと向かうんだ。

殿下が事情を話してある城の使用人たちがお前を完璧な女子に仕あげてくれるからな!

マリエルには俺から話しておこう。」


こうして最悪のミッションが僕に与えられた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る