第22話 よく似た笑顔



「本当に申し訳ありませんでした!!!」


控室に着くとすぐに僕は殿下に頭を下げ、謝罪した。


「殿下、お兄様は私のために怒って下さったのです。

私からも、申し訳ございませんでした。」


それを見ていたアンが一緒に頭を下げてくれていた。


「お二人とも顔を上げてください。」


殿下は微笑んでいた。


「エドワード様が声を荒げて下さらなければ、彼女の行動はエスカレートしていたかもしれません。

僕やアンが叱責すれば悪い噂にもなってしまっていたでしょう。

それは陛下もわかってらっしゃいます。

僕とアンの為に彼女に注意をして下さったこと、心から感謝しております。」


まさかの返答に安堵し、泣きそうになる。

だが、エミリーは悲劇のヒロインとなっているだろう。


「お嬢様、ドレスの染み抜きを致します。

すぐにお着替えを。」


マリエルがアンに着替えを促す。


「ありがとう、マリエル。

でも今日は替えのドレスを持ってきていないわ、、、。

染み抜きをしたらもう一度同じ物を着るから大丈夫よ。」


パーティーに着替えを持ってきている人の方が少ないだろう。

僕がもっと早く止められていたら、、、。

その時バンッ!!!!という音がして部屋の扉が開く。


「アンちゃん〜!

さっきは災難だったわね!

さあ、このドレスを着て会場に戻りましょうね!」


「王妃様!!!???」


突然現れた王妃様の発言にアンが驚いている。

薄紫色のドレスを持ち、差し出している。


「このドレスはね、私が結婚する前に着ていた物なのよ〜!

アンちゃんが貰ってくれたら私も嬉しいのだけれど、、、どうかしら?」


殿下とそっくりな優しい微笑みと声に、今度はアンが泣きそうになっている。

殿下のお顔は王妃様とよく似ている。


「王妃様ありがとうございます、、、。

大切に、大切に使わせて頂きます!」


「お母様、ありがとうございます。」


殿下とアンが並んで頭を下げた。


「それじゃあ、先に会場に戻ってるわ〜!」


アンが着替える為、控室から出た僕と殿下。

殿下も少しジュースが掛かっていた為、着替えに向かった。

僕は先に一人会場へと戻ったが、居心地が悪かった。

陛下と王妃様が気を遣って声を掛けてくれて、少しホッとした。

この国のトップのお二人は本当に素晴らしい方だと思った。


「殿下と聖女様は本当にお似合いね!」


「仲睦まじいお二人だ!」


会場が騒めき、殿下とアンの話ばかりになっていた。

扉の方を見ると着替えた二人が歩いてきた。

殿下の首元の飾りがアンの着替えたドレスと同じ色になっている。


「もう大丈夫そうだな。」


陛下は笑顔でそう呟くと、僕のそばから離れていった。

いつの間にかエミリーは会場から姿を消していた。




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