第16話 対策と作戦



「ぜひ!!!ぜひお聞かせ下さい!!!」


殿下がテーブルに手をつき、体を前に乗り出している。

よほど大変な思いをしていたのだろう。


「アンと殿下は同学年で、クラスも同じですよね?

殿下はご学友と、アンはマリエルと共に行動することが多いと思います。

しかし!明日からは殿下とアンが常に共に行動するというのはどうでしょう?」


殿下の顔が晴れやかになる。


「それは良いですね!!!!!

僕と婚約者のアンが共に行動していれば、エミリーも容易には近づけないと思います。

アンの不名誉な噂、僕とエミリーの噂を払拭することも出来そうです!」


「そんなことでエミリー嬢は殿下を諦めるでしょうか?」


父が呟く。


「彼女が今度はアンに危害を加えるという可能性が出てくるのでは?」


確かに、エミリー嬢は諦めないだろう。

アン自身を攻撃することもあるかもしれない。


「僕もそこは懸念していました。

そこでロン様に協力して頂けないでしょうか?

ロン様なら殿下とアンを危険から守り、更にエミリー嬢に苦言を呈すことも可能なのでは?

アン、殿下はもちろん、侍女のマリエルでは身分の違いから到底意見できません。

しかし、伯爵の御子息であるロン様なら立場的にエミリー嬢に意見してもおかしくはない。」


「エドワード!お前そこまで考えていたのか!さすがアンのためなら死ねる男!」


父からおかしな誉め方をされている。


「素晴らしいです。エドワード様!!!」


殿下からもお褒めの言葉を頂いた。


「1つ良いですか?

エミリー嬢に巻き戻りの事実を伝え、断罪することも出来るのでは?」


どさくさに紛れて聞いてしまう。

竜を止められなかったということはエミリー嬢は聖女ではない。

殿下や、国に虚偽の報告をしているのなら国外追放くらいには出来る。


「それは難しい話だな。

我々の巻き戻りの話を信じる者はなかなか居ないだろう。

そうなるとエミリー嬢の嘘は証明出来ない。

正当な理由なく聖女候補を国外に出せば、聖女を信仰する国民たちから反感を買うだろう。

噂を知る者たちからはアンの策略だと思われてしまう可能性も高い。

それにエミリー嬢に巻き戻りの事実を伝えれば、対策を取られるかもしれない。

まあ、エミリー嬢が巻き戻っている可能性もゼロではないが。」


なるほど、さすが父だ。


「では、婚約発表を早めるのはどうですか?

正式にアンを婚約者だと発表してしまえば、エミリー嬢が何をしても無駄なのでは?」


今度は殿下が話し出した。


「それも難しいのです。

婚約発表は盛大なもので、今からでは準備が追いつきません。

父や、母は公務でなかなか時間が取れないですし、両親ほどではないですが僕にも公務があります。

他国からのゲストも大勢いらっしゃるので、日程を早めるのは厳しいかと、、、。」


3人で考え込む。


「殿下、エミリー嬢の奇跡のカラクリを暴ければ彼女は聖女候補から外れますね?」


父の言葉に殿下がハッとする。


「そうだ!奇跡!

奇跡にカラクリがあり、それを見破ることが出来ればエミリー嬢の嘘を指摘することが出来ますね!」


噴水の水の浄化、心を通わせた動物たち、下がった子どもの熱。

これらにはきっとカラクリがあるはずだ。


「殿下はロン様に協力を仰ぎ、学園ではアンと共に行動して頂きます。

我々はエミリー嬢の奇跡のカラクリを調査致します。

今後とも巻き戻りの件は陛下を含めた4人だけの内密にする。

ということでよろしいでしょうか?」


父が今日の話をまとめた。


「お二人にはご苦労をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願い致します。」


こうして2回目の会合が終わった。




屋敷に戻ると、父の書斎で二人だけで話すことになった。


「いま起きてる奇跡は噴水の浄化と、動物と心を通わせたことだな?」


父の確認に僕がうなづく。


「まずは学園に行き、汚水が出た原因を調べようと思う。

平日は生徒もいるし、目立ってしまうだろうから休日に学園へ行こう。」


こうして僕らは学園内で噴水の調査をすることが決まった。


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