二度と妹を悪役令嬢にはしない!!!《完結しました!!!》

enmi

第1話 悪夢からの目覚め



「アン!!!アン起きてくれ!!!頼むよ!!!」


瓦礫が降る音、ガラスが割れる音、そして竜の咆哮の中で父さんがアンを起こそうと叫ぶ。

アンの顔は茶色い長い髪で隠れ、見ることがで出来ない。

半壊の城を赤い竜が掴むと、クッキーみたいにボロボロと壊れた。

咆哮だけで、王城のガラスが割れる。

城の上部はほとんど壊され、星いっぱいの夜空が見えていた。


「エミリー!!!竜を抑えてくれ!!」


フレデリック王子は自身の新しい婚約者の肩を揺らし、助けを求めている。

婚約者は顔を真っ青にして、涙を流してただ竜を見ているだけだった。

愛しい王子の声も彼女には届いていないだろう。

二人の美しい金の髪は土埃で汚れていた。


「助けてくれ、、、、。」


微かに聞こえる声の方を見ると、瓦礫の下敷きになった国王がこちらに手を伸ばしている。

額からは血が流れ、転がる王冠は歪んでいた。


バン!!!!と大きな音がして、後方にあった扉が開き、兵士たちが現れた。

竜を見て一瞬固まるが、すぐに竜に立ち向かう者、主人を瓦礫から救おうとする者、王子と婚約者を連れ出そうとする者、各々できる限りの手を尽くそうとしていた。



「ギャオオオオオオオォォォ!!!!」


夜空を見上げ、竜が鳴く。

鳴き終わると視線を落とし、こちらを見た。

竜の口が大きく開き、一瞬にして僕の体は灼熱の炎に包まれた。


「熱い!!!!熱い!!!!」

「ギャー!!!!!」


周りから次々に悲鳴が聞こえる中、僕は静かに絶命した。












「うわあああああ!!!!熱い!!!!熱い!!!!助けて!!!」


僕は自分の声で目を覚ました。


「エドワード様!!!どうされました!!??」


僕の声がして数秒後には執事のオリバーがドアを勢いよく開け、飛び込んできた。


「オリバー、、、、???」


僕は目の前の状況が理解出来なかった。

先程まで王城にいて、竜と対峙していた。

竜が吐く炎に包まれ、熱さの中で絶命したはずだった。

しかし、見渡すと自室のベッドの上。

窓から見える空は、星いっぱいの夜空ではなく、雲ひとつない晴天だ。

思考が追いつかず、しばらく固まっていた。


「エドワード様、こちらを。」


オリバーが差し出してくれたコップを手に取り、水を一気に飲む。

手が震えていて、うまく飲めない。


「悪い夢でも見たのですか?」


オリバーの問いに返答が出来ず、また思考を巡らす。

夢?夢だったのか?

竜のことも、死んだことも、可愛い妹を信じることが出来なかったことも。

考えがまとまらず、オリバーにもう一杯水を貰おうとしたその時だった。



「あああああ!!!!熱い!!!助けてくれ

!!!アン!!!起きてくれアン!!!!」


父の寝室から目覚めの僕と同じような内容の大きな声が聞こえた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る