【69】 レベル振り分け

 バオのレベルは『2960』だった。

 これを四人で分けると『Lv.740』だ。



「ルナ、すまない……ヘソクリ・・・・を使う!!」

「こんな非常時ですから、心置きなくご使用下さいっ、カイト様」



 将来の帝国移住資金にしようかと思っていたんだがな。ここで使う羽目はめになろうとは――いや、だけど、ルナの言う通り非常時である。



「レベル売買スキル発動……振り分け開始! みんな! 『Lv.740』を受け取れ!!」



 ルナ、ソレイユ、ミーティアにレベルアップを施し、一気に引き上げた。もちろん、俺自身も。



 俺    『Lv.150』 →『Lv.890』

 ルナ   『Lv.1』  →『Lv.741』

 ソレイユ 『Lv.750』 →『Lv.1490』

 ミーティア『Lv.1200』→『Lv.1940』



「振り分け完了!」

「さすがカイト様です」

「凄い、力がみなぎってきたわ……ねぇ、ミーティア」

「ええ、こんなにレベルアップするなんて!」



 みんな驚愕していた。

 俺も驚いた。こんなにも全身からエネルギーがあふれてくるんだな。知らなかった……。以前、バオと戦った時は興奮状態で、こんな冷静に感じている暇はなかったからな。この力なら『シャロウ』に――いや、バオに一撃くらいは与えられるだろう。



「みんな、行くぞ!」



 ヤツのところへ……!



「バオ!! 店をよくも燃やしてくれたな!!」

「お、俺様じゃない……! 俺様じゃない!!」

「犯人はお前だろうが!!」


「違うんだ……カイト! お前は誤解をしている!! 火を放てと命令したのは少なくとも俺様ではないのだ……!! 本当だ! 信じてくれ!」


 ……そんな言い訳を。今更信じられるわけねぇだろ!

 そもそもシャロウ時代に、バオからはよく嫌がらせもされていた。その恨みも相当ある。そして、今回の放火。もとはと言えば、ルナの資金で買った大切なお店。


 これは断固として許せん悪行……犯罪行為である!



 縛り上げて、帝国に突き出してやる!!



「とりあえず…………殴るっ!!!」



 現在『Lv.890』となった俺の身はスポンジのように軽い。

 予想外すぎる移動速度ダッシュに、自身ですら魂消たまげたほど。


 かつてないほど拳に力が入る。


 ……いけるっ。



 ヤツの、あの憎らしい顔面・・に――――!!



「うあああああああああああ、ヤメロオオオオオオオオオ!!!!! 俺様は……『Lv.1』なんだおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



「知るかああああああああああ、ボケエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」



 今までの恨みを――――、


 ルナやみんなの想いをこの拳に――――、



 俺は――――バオをブン殴った――――――!!!

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