日記(1部抜粋)
ひまかじま
日記(1部抜粋)
3月7日 晴れ
普段より1時間ほど早く目が覚めた。
今朝は春先にしては気温が高かったので、寝苦しく感じたのかもしれない。
特にやる事もないので縁側で本を読んでいたところ、庭の真ん中に白く丸い毛玉のような物体があるのに気付いた。
猫だった。首輪がなかった。野良猫だろうか。えらく堂々と日向ぼっこをするので、少し見入ってしまった。
猫はこちらに気付くと鳴き声をあげた。お腹が空いているのかと思い、棚にあったシーチキンをくれてやった。猫が鳴き止んだを見て、わたしは再び本に目を落とした。読み終わる頃には庭に猫の姿はなく、代わりに隅の方にぽつんと糞が落ちていた。
4月6日 くもり
今日は朝から八百屋へ向かった。
メバルが大変安かったので大量に買ってしまった。暫くは煮付けが続きそうだ。
早速、昼食用にメバルのを煮付けていると、庭から鳴き声が聞こえてきた。庭に向かうと、先日の野良猫が味を占めたように声をあげていた。
仕方がないのでメバルの一部をくれてやり、調理に戻った。焦げていないか心配だったが、問題ない様子で安心した。やはり旬のメバルはいい。
しかし、猫の口には合わなかったの様子で、庭にはメバルが殆どそのまま残っていて、鳥がたかっていた。
5月17日 快晴
洗濯日和とは今日のような日のことを言うのだろう。朝から恵みの光が燦々と降り注いでいた。
衣類を一通り物干し竿に干すと眠気が襲ってきたので、縁側で昼寝をした。
目が覚めると背中にふわりとした感触があった。あの猫がわたしの隣で寝ていたのだ。
わたしは猫にタオルケットをかけてやり、部屋でテレビを見ることにした。
夕暮れになると、やはり縁側に猫の姿はなく、オムレツ状に盛り上がっていたタオルケットはへたと地面に伏して、縮れた毛糸を庭に向かって伸ばしていた。
6月4日 くもり
来週、旧い友人が泊まりに来るので、使っていなかった部屋を一室、掃除する事にした。
部屋は物置同然に使っていたので、清掃には多大な労力が必要となった。今後は要らない物はすぐ捨てるようにしようと思う。
あまりに重労働なので休憩をとっていたところ、急に部屋の扉が開いた。あの野良猫だった。猫という生き物は随分器用らしい。
ちょうど片付け中に見つけたプラスチックのボールが手元にあったので、これで遊んでやった。猫の目はいつも以上に丸くなっていた。
掃除を始めると猫は部屋の隅でじっとしていた。以外に利口なのかと思ったが、掃除が終わる頃には黒い虫を加えて此方を見ていた。
やはり気ままなのか、それとも掃除を手伝ったつもりなのだろうか。
1月3日 くもり
冷え込んだ夜の次の朝は、とにかく布団が恋しくなる。目が覚めてから起き上がるのに10分ほどかかってしまった。ここ最近生活習慣が乱れがちなので、早朝にジョギングを始めるのもいいかもしれない。
朝、縁側を歩いていると、白い毛を見つけた。恐らく動物の物と思われる。そういえばあの野良猫も白く長い毛を携えていた。
最後に猫が訪れて半年ほどだろうか。飼い猫は生命の危機に瀕すると姿を消すようだし、あの猫にもそういった事情があるのかもしれない。
わたしは毛を掃除して布団を被り、テレビをつけて箱根駅伝を観戦した。
わたしが贔屓にしている大学の選手たちは軒並み調子が悪く、シード権を落とす結果に終わってしまった。
来年こそは優勝争いに加わってほしいものだ。
日記(1部抜粋) ひまかじま @skyrunner1997
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます