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海里

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第1話 一夜の熱情

軽率すぎたかもしれないと楓奈かなでは思いながらも、自らの体にのし掛かる存在からのキスを受け取る。


日向ひむかいの柔らかい唇は、そういった行為に慣れていることを伝えるように躊躇いがなく、楓奈はそれに合わせるだけで精一杯だった。


体を他人と触れ合わせること自体が初めてではないにしろ、恋人とも言えない状態でしたことなど今までにない。


芳野よしのさんの唇すごく柔らかいし、なんかいい匂いがする」


「香水はつけてないので、アロマをよく焚いてるからかも」


「ぽいなぁ」


被さる存在は楓奈の耳朶を緩く噛んで、そのまま首筋を唇で辿って行く。


「もうっ……」


それだけのことで背筋を這い上がるものがあり、楓奈は小さく不満を出す。欲望に火が点るかのようなそれ。体は心よりも正直に反応を示す。


「ここまで来てやっぱりやめるはききませんよ。もう完全にその気になってるので」


「わかってます」


「気持ち良くさせる自信はありますから」


笑顔で言われて、やはり早まったかもしれないと楓奈は後悔し始めていた。

同じ女性でも楓奈と目の前の存在、日向は全く性に関しての考え方が違うのだろうと感じてはいる。それでも最早逃げ道はなく、そのまま日向に身を委ねるしかない。


日向のことは好きという強い感情はないにしろ、嫌いではない。ただ、普通に仕事でつき合うだけの関係だと思っていたのだ。


脱がせますね、とあっさり日向に上着を剥ぎ取られ、ある一点をじっと見られていることに気づく。


「何ですか?」


「着やせするんだなっと思って」


思わず胸を両手で覆うが、可愛いと言われて楓奈は再び唇を奪われる。

そのまま抱き込んだ手が背中に周り、器用にブラのホックを外すと弛んだ隙間から日向の手が直接胸に触れてくる。


日向の掌は僅かに汗を掻いているのか、胸にくっつくように馴染んで、好き勝手に動く。


ただ、それだけなのに体は更に期待をしていることを楓奈は感じていた。


「すごく当たりな気がする、芳野さん」


何が当たりなんだと言いたかったが、それよりも自分だけではなく日向にも服を脱ぐことを求める。


ごめん、ごめんと言いながら一気に日向は上着を脱ぎ、楓奈と同じ上半身裸の状態になった。


「日向さんだって、結構胸大きいじゃない」


どうしても目が行くのは話題になっている場所で、楓奈の方が大きいかもしれないが、日向も標準よりも少し大きいように楓奈には見えた。


「自分の胸なんか愉しくないでしょう。でも、芳野さんってアースカラーってイメージあるから、逆にインナーは濃い色でちょっと透け感のあるやつとかだとすごい燃えそうな気がする」


「…………そんな人だったんですね、日向さんって」


「普通じゃないですか? 仕事場でそんなこと言ってたら変態ですけど、誰だって性欲はあるし、エロいと燃えますよ?」


「妄想は好きにしてくれればいいですけど、しませんからね」


「大丈夫、今の芳野さんも十分刺激的ですから」


性欲を満たすための行為といえば行為なのだが、とはいえあからさまなそれに楓奈は返す言葉もなく呆れていると、日向が動きを再開させる。


楓奈の胸に唇を載せ、


触って

吸って

舐めて

食んで


「もう……胸だけじゃなくて、下も触って欲しいです……」


羞恥を覚えながらも楓奈がそう言ってしまうほど、日向はずっと楓奈の胸を攻めていた。


「芳野さん可愛い。大丈夫、そっちもちゃんと満足させますから」


言ってることは一々引っかかりを覚えるものの、日向の愛し方は丁寧で、その夜だけで楓奈は何度も絶頂を味わうことになる。


体が溶ける。

抵抗できない。

求めてしまう。



酔った勢いに流されて一度だけのはずが、体の相性の良さもあってその関係はそれ以降も続くことになる。

 

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