第23話 ドラゴンを倒す(12月1日加筆修正)

翌日、朝の支度が済むと馬車はルゾルトへと向かって進む。

昨日の遅れを取り戻す為、馬車は少し速度を上げて街道をひた走る。

ちなみに今日は馬車に隠蔽を掛けた。戦闘になって遅れるのがいやだったからだ。「昨日、結界じゃなくて隠蔽掛ければ良かった」と後悔したのは内緒だ。

そんな訳で、本日は魔物に見つかる事も無く、スイスイと距離を伸ばすことが出来た。


そして、昨日から夜の見張りにはライト達も参加している。

ライトの時計で10時から0時までが白薔薇。0時から3時までがライト達。3時から6時の一番危険な時間帯を雷光が受け持つ事に。

一応言わなくても分かると思うが、ライトとアンがひと手間加えているので何事も無く終わった。

そして今晩も同じ時間割での見張りとなる。そろそろ、誰かおかしいと気付いて欲しいが、誰もおかしいと思わないところが微妙だ。

まあ、気が付かれても、余計な詮索をされるだけなので、気付かれない方がいいのだが。


そして、三日目。

今日の昼過ぎには峡谷を抜け、平原へと出たら夕方には街に到着する。「やっと抜けるのか~」と、気を抜いたのがいけなかった。

朝一、出発前に効果が切れた隠蔽を掛け直そうかと迷ったライトは、「まあ、もう少しで峡谷を出るんだし、掛け直さなくてもいっか。」と隠蔽を施さなかった。

しかし、それがマズかった。

昨日から音や声はすれども、姿の見えない馬車を探していた魔物が居たのだ。

そんな事も知らず、馬車が走り始めて一時いっとき後。

ライト達が幌馬車内でのほほーんとしていた時に、突然気配察知に反応がある。慌てて馬車の後部から顔を覗かせるライト。しかし、後ろには何も居ない。

おかしいと思っていた矢先にヴェルが叫ぶ。


「ご主人様、上!」


ライトはその声と共に空を見上げる。そして奴が目に入る。

ロック鳥だ。

ロック鳥はエンゲレン連峰の山頂の方に生息する、体長4mもある大きな肉食の鳥だ。基本、こっち側に降りて来る事は殆どないらしい(後の御者談)。

何を思って山を下りて来たのかは知らないが、隠蔽の効果が切れ姿を現した馬車を見つけると、ロック鳥はその大きな翼を広げて急降下してくる。


「ティーナ!御者のおっちゃんに報告!アン、魔法で牽制!ヴェル、バインド!」


俺はそう言うと荷馬車から飛び降りウィンドアローを放つ。

ロック鳥はライトの放つウィンドアローを避け、アンの放つファイヤーアローをも避け、期待のヴェルのバインドは射程外。

慌てたライトが、バインドに射程があるの忘れていたのだ。


ロック鳥はこちらに遠距離攻撃があるとみると、一度空へと舞い上がり体制を立て直して再度急襲をしようとしている。

しかし、そこでライトは気になる物を発見する。


「ん?なんだ?何かが近付いて来る?」


他の馬車からも雷光と白薔薇のメンバーが駆け付ける中、ライトの目線。ロック鳥の後ろに点が現れたのだ。その点は少しずつ大きくなり、終いにはその姿がはっきりと見える様になる。

それは、点であるにも関わらず、長い首に大きな翼をはためかせ、だらりと垂れ下がった二本の足と尻尾がある。そう、ドラゴンだ。

そしてそれはロック鳥も気が付いたようで、ドラゴンの気配に気付き慌てて逃げようとする。

ライト達も雷光も白薔薇も、既にドラゴンの姿を目視している。だが、ドラゴンの速さが尋常では無く早い。

ドンドンとそのシルエットが大きくなっており、既に目と鼻の先だ。


「ドラゴンだ!逃げるぞぉ!馬車に乗れぇぇぇ!」


ヴィーゴが恐怖に震える身体を無理矢理動かし叫ぶ。

先頭の馬車まで走る訳にはいかないので、二台目と三台目に全員が転がり込むと、御者が急いで馬車を出そうとする。しかし、ドラゴンが近付いて来てるからか、その圧倒的な気配に馬が言う事を聞かない。

相当マズい状況だ。


「アン先頭、ヴェル二番目!馬を蹴り出すんだ!ティーナはここに残って!」


ライトの指示に、アン、ヴェルは馬車の前方部から飛び降りると、各々が馬車を牽く馬の元へと向かう。

そして、アンから順番に馬のケツに蹴りを入れる。正気に戻った馬は、ライト達三人を残し一目散に走り去る。

何故ティーナを残したかと言うと、呪いの関係でこの場に居ても守り切れないかもしれないからだ。それに、ドラゴン相手に戦えるとも思えない。


馬車が走り去ったのを確認した後、上を見れば既にロック鳥の姿は無く体長30mくらいはありそうな赤い色をしたドラゴンの口の中で咀嚼されている。


「あれを食べ終わると、次は俺達だろうな。」


そう呟いたライトと、ドラゴンの目が合う。

そして、「グギャァァァァァ!」と咆哮を上げるとこちらに向かって急降下し始める。


「ドラゴンなんぞ、どれほどぶりかのう。ま、一撃じゃな。」


「私は多分、二撃くらいですかね。」


そんな呑気な事を言うアンとヴェル。内心「そんな事言ってる場合じゃないだろ!」と思いつつ、腰の剣を抜き構える。しかし、それにアンが待ったを掛ける。


「ライト、その剣ではドラゴンに傷一つ付けられぬぞ?もう一つの、妾の姿を見せてくれた時の剣を使うのじゃ。」


そう言われたライトは、鋼の剣を収納に仕舞い代わりにミスリルの剣を抜く。


「倒せるか?」


「私とアン様が居れば問題なく。トドメはご主人様がお刺し下さい。」


この二人余裕過ぎる。


「んじゃ、やってみようかな!」


「ちょっとそこまで行ってきます」的に言い放ったライトは、ドラゴンに向けて走り出す。ドラゴンは首を擡げながら喉が膨れ歯の隙間から炎をチラつかせ、ブレスを吐く準備を整える。

しかし、無常にもそれは叶わなかった。


「バインド!」


ヴェルがドラゴンを拘束する。


「ストップじゃ。」


そして、アンがドラゴンの動きを止める。拘束され、動きを停めたドラゴンが、地面に墜落する。

ライトは地面を蹴り、ドラゴンの顔目掛けて飛び上がる


「死ね・・・あっ!コピー!んじゃ、死ねやぁぁぁ!」


うっかりコピーを使うのを忘れていたが、ギリギリでコピーと叫ぶ。そして、地面に落ちたドラゴンの眉間に向けて、剣を突き刺す。

ミスリルの剣は、ドラゴンの眉間からスッと体内に入って行くと、頭蓋を貫通しドラゴンの脳を突き刺す。まさか刺されるとは思っていなかったドラゴンは、その痛みに悶え苦しみ暴れる。ライトは振り落とされない様に、剣へとしがみ付く。

そして暫くすると、ドラゴンの目から光が消えた。


「流石はご主人様です。惚れ直しました。」


「うむ。ライトよ、カッコよかったぞ。」


ドラゴンから剣を抜き、死骸を収納に仕舞った後に二人の元へと戻ると、二人から賛辞を受けた。

ちょっと照れるライト。顔が赤かったからか、二人はニヤニヤしてた。殆ど、アンとヴェルのお陰なのだが。

一頻り照れた後、三人はこの後の事を考える。


「さて、どうやって追い掛けるかな。どっかで待っててくれればいいけど。」


そう言いながら、馬車が走り去った方向へと振り返ると、少し離れた場所で「嘘だ」「信じられない」と言った驚愕の表情をした白薔薇メンバーと目が合った。





現在、ライト達は三人でお喋りをしながら歩いてる。

そしてその後ろをどんよりとした感じの白薔薇メンバーが歩いている。めちゃくちゃ空気が重い。


あの後、「ドラゴンは逃げたと言う事にして欲しい」と白薔薇メンバーには言ったのだが、その種類が種類だったらしく「レッドドラゴンは人を見て逃げる事は無い!そんな嘘は直ぐにバレるから、正直に話した方がいい!」とマリアリーナに詰め寄られたのだ。その時、マリアリーナから、いい匂いがしたのは内緒で。

で、結局、「本来こんな場所に居ない筈のドラゴンが出たのだから、ちゃんと報告をしないと街道を行き来する者達が危険に晒される事になる。」と言われ、渋々こっちが折れる形に。


その時にアンとヴェルが、ライトに怒鳴り散らすマリアリーナに殺気を振り巻き激怒してた為、今に至ると言う訳だ。


それから暫く歩き続け、峡谷を抜けた所で馬車と合流出来た。

エンシオも雷光も「三人が逃がしてくれたのだから、一晩ここで待とう」と言って待っていてくれたそうだ。

ただ、途中で白薔薇が居なくなった事には、全く気付いていなかったらしいが。

結局、今日街に行くのは時間的にも馬的にも無理だ。と言う事になり、峡谷から少し離れた場所で野営する事に。


「で、結局ドラゴンはどうなったんだろ。」


そうアントンが聞きたそうにライトを見ながら呟く。

そして、ヴィーゴも聞きたかったのだろう、直接ライトに聞いて来る。


「で、どうなったんだ?」


「あ~、それはですね。」


どうしようかと悩んでいると、隣のアンとヴェルが口を開く。


「ドラゴンはライトが倒したぞ?ちゃんと死骸も回収して来ておる。」


「ですね~。ご主人様、カッコよかったです!」


それを聞いたティーナが残念そうに「流石ライト様ですわ。私もその雄姿を拝見したかった。」と俯く。

だが、ライト的には、これから起こるであろう厄介事の方を気にしている。


「やっぱりお前が倒したのか!」


そう言うヴィーゴ達の目が、キラキラとした純朴な目でライトを見つめている。

その目がとても怖い。

そして、その話を聞いたエンシオが


「おお!坊ちゃんは、ドラゴンスレーヤーになられたのですね!そんな方とご一緒出来て光栄です!是非、ドラゴンの素材は我がエンシオ商会へお売り下さい。」


と、ニコニコ揉み手をしながら近付いて来る。

こっちはこっちで、違う意味で怖い。

白薔薇は、目の前で見ていた光景を思い返し、恍惚な表情でライトを見ている。

それは、雌が雄を狙う獰猛な目つきだ。


「もし良ければ、ドラゴンの死骸なんぞ見せて頂く訳にはいきませんか?」


「別に構いませんよ?ただ、デカいので少し離れた場所でなら。」


そう言うと、テントから外れ少し開けた場所に移動する。

そして、ヴェルのマジックバックを受け取り手を突っ込むと、からドラゴンの死骸を取り出す。


「は~、綺麗な死骸ですね。死因は眉間への一撃ですか!血も無駄に流れていませんし、何より傷が少ない!これなら相当な値段で引き取れますね。」


一頻り見回したエンシオ。雷光、白薔薇の面々は、感嘆の溜息を吐き十分に見たのかその場を離れる。

ライトは死骸をマジックバックにいれる振りをし収納に入れると、みんなの後を追いテントへと戻った。



その後おしゃべりはお開きとなり、テントへ戻ったライトは自分の情報を確認する。


名前 : ライト

職業 : 冒険者(元奴隷)

称号 : 竜殺し(NEW)

種族 : 人種

状態 : 良好

年齢 : 11歳(NEW)

レベル: 48(NEW)

経験値: 31%/100%

体力 : 200

魔力 : 293

筋力 : 263

精神力: 262

瞬発力: 161

スキル:

剣術LV5(NEW)・格闘LV3・身体強化LV6 ・俊足LV3・気配察知・採取LV2 ・鑑定LV7・収納LV5(NEW)・隠蔽LV5(NEW)・結界術LV4 ・裁縫LV5・戦士の雄叫び(NEW)・覇気(NEW)


固有スキル:

▲コピーLV4

派生スキル:ペースト


剣術LV4・槍術LV2・格闘LV2・弓術LV3・棒術LV2・・盾術LV3・鑑定LV7・収納LV4・気配察知・気配遮断・身体強化LV5・俊足LV3・魔力操作・調教LV3・精巧LV:2・料理・採取LV1・奴隷術LV5・乗馬・操車術・帝王学LV2・算術・商才・隠蔽LV4・結界術LV4 ・裁縫LV5・弁術・交渉術・召喚術LV6・毒耐性・ライフドレイン・物理攻撃無効・異常状態無効・浮遊・咆哮(NEW)・物理防御耐性(NEW)・魔法防御耐性(NEW)・飛行(NEW)・爪技(NEW):ドラゴンクロー


・火魔法LV3

LV1:ファイヤーボール、ファイヤーアロー

LV2:ファイヤーボム、ファイヤーウォール、

LV3:フレイムアロー、フレイムジャベリン

・水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュア

ポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

・風魔法LV1

LV1:ウィンドアロー

・土魔法LV3

LV2:アースニードル

LV3:アースウォール

・雷魔法LV1

LV1:ライトニング

・闇魔法:

バインド、テラー、コンフュージョン

・生活魔法:クリーン、ドライ、ライト、ウォーター、ファイヤー

・時空間魔法LV2

LV1:スロウ

LV2:エリアスプレッド

・付与魔法LV1

LV1:サイズ調整


レベルが一気に上がっていた。それだけドラゴンは強敵なのだろう。

後、いくつかスキルレベルが上がったのと、ドラゴンからもコピースキルも手に入っており、更に普通にスキルが増えてた。。


ちなみに、いつの間にか11歳になっていた。

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