第140話:付与魔法使いは感心される
「給力って、魔道具が消費する魔力を補給することよね。普通は魔石を入れ替えるだけだけど……それでどうして涼しくなるの?」
ユキナの疑問はもっともだ。この疑問を解消するには、魔力の原理原則を理解する必要がある。
この世界における魔法の規模や威力、効果は魔力に含有されるエネルギー量が上限になる。すなわち魔法は魔力エネルギーを動力や光、熱に変換しているのだが、実は熱などのエネルギーから逆に魔力エネルギーに変換することができることも知られている。
この原則は、魔導具への給力にも使われている。例えば燃料を燃やして、これにより発生する水蒸気により歯車を回すことでエネルギーを取り出し、吸収したエネルギーを魔力に変換する作用がある魔石と呼ばれる鉱石に閉じ込めるといった手法だ。
これにより、固形である魔石を入れ替えるだけで簡単に魔道具への給力が可能になっている。
「要は、付与魔法で周りの熱をさっき渡した魔石に吸収させているんだ」
「……?」
「どういうことですか?」
二人ともまだ理解が追いついていない様子。もう少し説明が必要そうだ。
「気温が高いっていうのは、つまり大気中の分子の運動速度が速いってことなんだ。つまり、熱エネルギーを適度に魔石に吸収させることで、体感気温が二十度になる辺りまで熱運動を抑えてる」
「な、なるほどです……! さすがはアルスです!」
「思いついても、それを付与魔法に落とし込むなんて普通できないわよ。これなら魔力の消費がないどころか貯まっていくわけね」
どうやら、理解してもらえたようだ。
「それだけじゃない。ニーナたちの話ではこの先寒くなるエリアもあるみたいだが、その時は魔石に貯まった魔力を利用して逆に温めることもできるんだ」
これなら、問題なくエルフの里まで辿り着けるだろう。
暑いにせよ、寒いにせよ、気温の変化はストレスになる。だが、この問題さえクリアできれば魔物がいない上に最短距離で辿り着けるただの理想的なルートになり得る。
「アルスさん、凄いです!」
「付与魔法って本当何でもできるんですね」
ニーナとマリアの二人も感心しているようだった。
「まあな」
こうして、俺たちはエルフの里を目指したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます