第110話:フィーラたちは会議をする

 その頃、フィーラは百人以上の奴隷を詰め込んだ建物の一室で、秘密の会議を執り行っていた。


 部屋には、フィーラの他に勇者パーティのメンバーであるマグエルとセレスたちの姿もあった。


 この三人に加え、『レッド・デビルズ』のギルドマスター、ヘンリックも参加している。


 勇者一行と犯罪ギルド『レッド・デビルズ』。


 一見、関係があってはいけない二つの組織。


 しかし、実はこれらの組織は密接に関係していた。


 実は、フィーラたち現勇者の三人こそが『レッド・デビルズ』を取り仕切る黒幕なのである。


 フィーラがボス。


 マグエルがナンバー2。


 セレスがナンバー3である。


 『レッド・デビルズ』の表の長を務めるヘンリックの序列はナンバー4。


 ヘンリックはギルドマスターでありながら、実は行使できる権限の幅は狭い。裏では、四番手の存在でしかないからだ。


 会議はこの四名で行われていたのだが、ヘンリックはフィーラに詰められていた。


 というのも、ここ数日の『レッド・デビルズ』の動きが原因である。


「メンツのために殺害計画ねえ。この忙しい時期にお暇なようで羨ましいわ」


 フィーラのセリフは、もちろん皮肉である。


「し、しかし我々にとっては重要な問題なのです」


「黙れジジイ。フィーラ様のお考えがわからんのか? あ?」


 マグエルはヘンリックの首根っこを掴み、至近距離で凄んだ。


「別にあんたの代わりなんていくらでもいるんだけど~? どうすんの?」


 セレスも一緒になってヘンリックを詰めている。


「くっ……わ、わかった。取りやめさせる。申し訳ございませんでした……!」


 ヘンリックはその場に手を突き、頭を地面に擦り付けて謝罪したのだった。


「わかればいいのよ。さて、ここからが本題」

 ヘンリックの態度に満足すると、フィーラは少し間を置いて宣言した。


「ついに明日、計画を実行するわ」


「おおっ……! ついに……!」


「ようやく私たちの時代が来るんだね」


 わっと湧く一同。


「ええ、ようやくよ。じゃあ、明日の流れを説明するわね」

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