第108話:付与魔法使いはようやく真実に辿り着く

「あっ……はい! 二人目は、『レッド・デビルズ』のギルドマスター、ヘンリック・ヒューリの命令でした。依頼を受けての命令ではなかったようです」


 依頼を受けての命令じゃなかっただと⁉


「えっ⁉ じゃあ、俺がギルドからいつの間にか恨みを買ってた……ってことなのか?」


 俺は、これまで『レッド・デビルズ』とは何の関わりもなかった。


 基本的に治安維持は衛兵や宮廷騎士団の仕事。


 少なくとも勇者として活動していた中で俺が恨みを買うようなことは、俺が記憶している限りではなかったはずだ。


「すごく理不尽な理由なのですが……今回、二度目のアルスさん暗殺を企てたのは、勇者ガリウスから受けた依頼を、我々が達成できなかったことにありました」


「どういうことだ?」


「『レッド・デビルズ』……というより、現在のギルドマスターのヘンリックは、すごく体裁を気にするんです。つまり、アルスさんの暗殺に失敗したままにするわけにはいかなかったため、依頼とは関係なく暗殺を企てたということです」


「……なるほど、そういうことか」


 ようやく全貌が掴めた。


 そりゃあいくら考えてもわからなかったはずだ。


「と、ということは、アルスはずっと命を狙われるということですか⁉」


「そう……なります。ヘンリックの意思が変わらないうちは状況は変わらないと思います」


「そんな!」


「面倒な組織を敵に回しちゃったわね……」


 確かに安心して過ごせないのは厄介ではある。


 だが、俺にとっては致命的な問題とまでは言えない。


 なぜなら――


「確かに面倒だが、さっき見せたようにどんな攻撃をしようと俺を殺すことはできない。それに、セリアとユキナが俺を守ってくれるだろ?」


「それはそうです! 私がアルスをお守りすれば……確かにです」


「そうね。油断していたから不意打ちされたけど、常に気を張っていれば、攻撃も未然に防げるかもしれないわ」


 それと、理由はもう一つある。


「それに、『レッド・デビルズ』が活動しているのは王都だけだ。明日にはここを出てエルフの里を目指すだろ? 王都に居さえしなければ問題はない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る