　暗殺者の身体に掛けられた、死亡トリガー付きの呪刻魔法を外すイメージを付与する。

　『呪刻魔法解除』。

「……⁉」

　呪刻魔法が解除される感覚を感じとったのだろう。

　暗殺者はビクっと身体を揺らした。

「もうこれで大丈夫だ。何を話しても君が死ぬことはない」

「す、すごい……！　どうやって……。あっ、えっと、なんとお礼をして良いか……と、というか謝らせてください……！　私、あなたを殺そうとして……」

「まあ、待て。一旦落ち着こう。深呼吸な？」

　暗殺者が落ち着くのを待つ間、一連の流れの秘密をセリアたちへ説明しておくこととしよう。

「いったい何が起こっているのですか……？」

「死んだように見えたのは気のせいだったってこと……？」

　セリアの問いに頷いた後、説明を始める。

「実は、『火球』は当てる直前に『防御力強化』を付与したんだ。だから、ほとんど『火球』によるダメージはなかったはずだ」

　これに加えて、実は『火球』の出力自体もかなり抑えていた。

　俺は最初から殺す気などなかったのだ。

「そして、俺の攻撃を受けてから動かなくなったのは、仮初めの死をイメージした付与魔法『仮死』を付与したからなんだ。まるで本当に死んだみたいだっただろ？」

　『仮死』を付与したことにより、動かなくなるだけではなく、暗殺者の顔は血の気を失って白くなっていた。

　四人が直感的に死亡と誤解したのはこれが理由だったはずだ。

「アルスに最初から殺意がなかったことはわかりました。けど、どうして私たちを騙すようなことをしたのですか？」

「そうよ。説明してくれればこんなにドキドキしなくて済んだのに……」

　さっきまでのような冷たい視線はいつの間にか消えていた。

　特にセリアとユキナからの失望したような視線は辛かったので、心が落ち着く……。

「それは、この子が死んだことにならないと不味かったからだ」

「死んだことにならないと……ですか？」

「ああ。多分だが、誰か他に暗殺の様子を見ていた仲間がいたはずだ。そうだろ？」

　言いながら、暗殺者の方を見る。

「ど、どうしてわかるのですか⁉」

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