第101話:付与魔法使いは奪還に成功する

 縄が解かれ、マリアがこちらにやってくる。


「マリア!」


「ニーナ……?」


 ニーナとマリアの二人は、互いに抱き合って喜びを表した。


 ニーナは涙を浮かべているが、マリアはきょとんとしている。


 未だ何が起こっているのかいまいち理解できていないのだろう”


「あの子のためにわざわざ買ったの?」


 フィーラが尋ねてきた。


「……まあな」


「ふうん。あなたお人良しなのね」


 確かに、普通は縁も所縁もない奴隷を助け出したばかりか、少しの繋がりがあることが分かったとしても、その妹まで探し出して、持ち主から買い取とるようなことはしない。


 俺がしたいからしただけなのだが、傍から見ればお人良しに見えるのかもしれない。


「そんなあなたには、良いことを教えてあげる」


「……?」


「今すぐ王都を出て行った方がいいわ」


「は?」


 何を言い出すかと思えば、何のつもりだ?


「最近は色々と物騒だから」


「王都の治安が悪いのは昔からのことだろ?」


「まあ、そうだけど」


 王都には、たくさんの人が定住しているばかりではなく、人の往来も激しい。


 貧富の格差が深刻なこともあって、犯罪は多い傾向にある。


 しかしこれはフィーラにも言ったように、今に始まった話ではない。


「私は勇者だから、色々と知っているの。忠告はしたわよ。お人良しのあなたは何かあったらすぐに首を突っ込みそうだから、離れていた方がいいんじゃないって。まあ、これは私のただの老婆心。好きにすればいいわ」


「何か知ってるのか?」


「さあ? 好きなように想像して」


 ……。


 情報が少なぎる。


 考えるだけ無駄か。


「まあ、どうせすぐに王都は離れるつもりだったよ。忠告サンキューな」


 どうせ、これから向かう先はエルフの里だ。


 ニーナとマリアを拉致の恐れがあるままにしておくことはできない。


 マリアを奪還したのは、ただの通過点に過ぎない。


 二人の安全を確保して、ようやくゴールなのだ。


「そう。それなら良かった」


 最後にそう言い残して。フィーラは俺たちの前を去ったのだった。


 ともかく。


 こうして、俺たちは無事にマリアの買取に成功。


 ニーナとマリアを再会させることができた。

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