第96話:ガリウスは裏切られる
◇
ガリウスはフィーラたち三人のメンバーと王都内で合流した後、すぐに村を出た。
初陣の舞台は、王都から北に三キロほど離れた場所にある『カタリナ洞窟』。
この洞窟は、王都から近いこともあり、手強い魔物はほとんどいない。
初陣にあえてここを選んだのには、理由がある。
新勇者の四人は、まだ別々の冒険者パーティ出身者の寄せ集めでしかない。
これから互いの実力を把握し、パーティとしてまとまるためには、このくらいの狩場がちょうど良かったのである。
王都から近いこともあり、三十分ほどで到着した。
「よし、洞窟に入ったらリーダーの俺の言うことを聞けよ? わかったな?」
『勇者パーティのパーティリーダー』という肩書きを手に入れたガリウスは、自分ですらも気が付かない間に気が大きくなっていた。
これにイラっとした表情を浮かべるのは、魔法師のフィーラ。
「ん? なんだその態度は? 知らないわけがないはずだが、勇者パーティにおいて、リーダーの指示・命令は絶対だ。嫌ならパーティを抜けてもいいんだぜ?」
調子に乗ったガリウスは追放をちらつかせ、指示に従うように要求。
しかし、フィーラたちは最初から従うつもりはなかった。
「ああ……哀れなピエロね」
「誰がピエ……がはっ!」
ガリウスが言葉を返そうとした瞬間。
ズンッ!
突如、背中から冷たい刃物が突き刺さったのだった。
「槍⁉ マ、マグエル……て、てめえ何考えてやがる⁉」
すぐに味方のはずのマグエルに突き刺されたことに気が付いたガリウスは、声を荒らげて抗議した。
「へへっ……ふんっ!」
ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべた後、マグエルは刺さった槍を引っこ抜いた。
「うああああああああああああっ‼」
強烈な痛みがガリウスを襲う。
もはや立ち上がることもできず、ひんやりとした土の地面から一歩も動けない。
傷は数多くの血管・神経が通る背中を貫通していた。
意識が朦朧とする中、ガリウスは、これが致命傷だということを既に悟っていた。
「な、なんで……俺、悪かった。調子……乗ってた。けど、何もここまで……」
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