第86話:付与魔法使いは事情を訊かれる

 ◇


「まったく、どういうことなんだ? 急に嘘なんて言い始めて……。背筋が凍りそうだったぜ」


 王宮を出た後、冷や汗を垂らしたナルドが俺の真意を尋ねてきた。


「横で立ってた俺までチビりそうだったぜ……。心臓に悪ぃよ」


「結局どういう意図だったの?」


 戦士のガレスと、魔法師のカイルも同様の質問を投げてきた。


 言葉には出していない四人も俺をチラチラ見ているので、同じ疑問を抱いているのだろう。


「ごめん、ちゃんと説明するよ。急に突き合わせて悪かった」


 芝居に付き合ってもらった身として、説明しないわけにもいかない。


「もともと、ベルガルム村で手紙を受け取った時から辞退しようと思っていたんだ。理由は、ナルドたちと同じ。俺にとっては、セリアやユキナと冒険者をやってた方が、魔王討伐って目標の中では近道だからな」


「まあ、そんなことだろうとは思ったが……にしても、事前に言ってくれりゃもう少し合わせようがあったんだぜ?」


「それに関しては悪かったな……。普通に断れば受け入れられると思ったんだ。みんなを巻き込むつもりはなかった」


「まあ、終わったことだしいいけどよ。それにしても妙に陛下は勘が鋭かったな。ありゃ下手な嘘じゃバレると思って、アルスみたいに完全な嘘はつけなかったぜ」


 その辺は、さすが国王と言ったところか。


 些細な矛盾からでも嘘がバレてしまいそうな圧があった。


「ナルドの嘘もなかなかだったぞ? あれは事実とは呼ばないって」


「そ、そうか?」


 ある意味、上手く事が運んだのは打ち合わせがなかったからかもしれない。


 ナルドは、もともと嘘があまり上手くない。


 虚実織り交ぜるとナルドの嘘は簡単に見破られてしまうので、事実をベースに解釈によって誤解させる今回のやり方がベストだったとも感じる。


「とりあえず、ベルガルム村のギルドには今日話した部分の報告書は書き換えてもらっておけよ」


「ああ、もちろんだ」


 この後、ベルガルム村にその旨を伝えた手紙を伝書鳩に持たせるつもりだった。


 できることは協力すると言ってくれていたし、これに関しては問題ないだろう。

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