第37話:付与魔法使いは教える
◇
「この辺がちょうど良さそうだな」
近くにいたサラマンダーは俺の『
「さっきのユキナの魔法『
「改良?」
「一般的に魔法の上達というのは、ただひたすらに練習をして強くなったらより強くって風に練習をするだろ?」
「そうね」
「魔法は使えば使うほど魔力の質が上がるし、練習をした魔法自体も洗練されたものになっていく。身体に覚えさせるって意味で理に適ったやり方ではあるんだが、これとは別にコツがあるんだ。まあ、見ていてくれ」
そう言いながら、さっきのユキナが使った魔法と同じくらいの魔力を練る。
付与魔法を使わない範囲で精密に魔法を組み立て、『火炎光線』を発動した。
俺の手元から火球がサラマンダーに向けて直線上に伸びていき、着弾。
光線が触れた部分が大爆発を起こした——
ドガガガガアアアアンンンッッ——!!
ユキナの攻撃の三倍程度の攻撃力があっただろう。
サラマンダーはほぼ溶けてなくなってしまっていたが、硬質な爪だけは残っていた。
「とまあ、こんな感じだ。念の為言っておくが、さっきの攻撃は魔力の質や量はユキナと同じくらいに合わせた。だから、単純なテクニックの差だと思ってくれればいい」
「う、嘘……テクニックだけであれほどの差が出るというの……!?」
「俺はつまらない嘘は言わないって言っただろ? そう、テクニックだけで差が出るんだ。それを教えようと思う」
俺は討伐証明用に爪を拾い、アイテムスロットに収納しておく。
それから、ユキナの方を向いた。
「まず、『火炎光線』って魔法は火球と光線魔法を組み合わせた魔法だよな?」
「ええ、基本魔法以外は全て何らかの魔法の組み合わせではあるわね」
基本魔法とは、初級魔法とも言い換えられる。
『
「その連結がより強ければ、魔力から変換されるエネルギーは無駄なく使えるようになるだろ? それをしているだけなんだ」
「そ、そんなことができてしまうの……? 魔法を繋げる時に無駄になってしまう魔力は諦めるものというのが常識だと思うのだけれど……」
「そんな常識、誰が決めたんだ? 俺には俺の常識がある。無駄になる魔力は極限まで減らすってのが俺の常識だ」
「……な、なるほど」
まずはユキナの中の常識を壊したところで、実践編へ入っていくとしよう。
「それで無駄なく魔力を使う方法だが……技術的には簡単な魔法を使っている。それは、魔法同士を連結させる魔法を組み込むんだ」
「別の魔法を使って、基礎魔法同士を繋ぐということ……? でも、それだと単純に使う魔法が増えるだけで消費魔力の無駄を削減することに繋がらない気がするけど……」
「当然使う魔法が増えるから消費魔力は増えるんだが、連結魔法はめちゃくちゃ小さな魔力で済むから、負担にはならない。全体で見れば無駄を省ける」
「そんなに小さくて済むのね。……あれ?」
ユキナは顎に手を当て、何かを思い出すような仕草をした。
しかし、思い出せないようだ。
「どうしたんだ?」
「いえ、応用魔法として成立させるためには基礎魔法の組み合わせである必要があるのよね。二つの基礎魔法を連結させるということは、連結魔法は基礎魔法じゃないとおかしいわ。でも、そんな基礎魔法あったかしら……?」
なるほど、ユキナが疑問に思うのも無理はないな。
おそらくこの世界のどこを見ても基礎魔法の書物に連結魔法を載せたものはないだろう。
なぜなら——
「そりゃあ、俺が作った基礎魔法だからな。ユキナは知らないだろう」
「……つ、作った!? アルスが!?」
「うん。ちょうど良い魔法がなければ作れば良いだろ?」
あれ?
俺なんか変なこと言ったかな?
勇者パーティ時代に、パーティを支えるために莫大な魔力を必要とした。
しかし魔力量がまだ少なかった頃は、その時にある魔力量でどうにかやりくりするしかなかった。
当初は魔力を節約するためにこの連結魔法を開発したのだが、それを転用することで魔法の威力自体を引き上げることができるようになったというわけだ。
必要だったから作ったというだけで、人類の歴史から見てもそれほどおかしなことをしているつもりはないのだが……。
「し、信じられない……けど、アルスが言うならもう納得するしかないわね」
「難しい話でよくわからないですけど、アルスが凄いのだけは確かです!」
「パパすごいの〜!」
セリアは攻撃魔法を使わないため知らなくても無理はないし、今のところ困ることもないだろう。
とはいえ、攻撃魔法に対する対策も必要になるだろうし、知識としては持っていて欲しいところだな。
それにしても、なぜかまた変なところで俺の評価が上がってしまったようだ。
俺は単にユキナに今すぐできる攻撃魔法のテクニックを教えているだけに過ぎないのだが……。
「まあ、理屈はこの辺にして実際にやってみようか」
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