追放された付与魔法使いの成り上がり 〜勇者パーティを陰から支えていたと知らなかったので戻って来い?【剣聖】と【賢者】の美少女たちに囲まれて幸せなので戻りません〜
第29話:付与魔法使いはゴーレムを狩る
第29話:付与魔法使いはゴーレムを狩る
◇
ガイルから新しい剣を作ってもらった翌日。
俺たちは朝イチで冒険者ギルドを訪れ、依頼が貼られている掲示板を物色していた。
「新しい剣を試すのに良さそうな依頼……どれもEランクの依頼で手応えがなさそうですね」
「そうだな」
ガイルの剣でなくとも今のセリアなら一撃で倒せてしまうのがEランク依頼。
今日の依頼をこなせばDランクに昇格できるだけのギルドポイントはあるのだが、Dランクの依頼を先に受けることはできない。
依頼と関係なく魔物を倒すことはできるが、剣を作ってもらうためにお金を使い果たしてしまったので、野宿生活を回避するためには目先のお金を何とか工面しなければならないのだ。
「諦めていつも通りの依頼にしましょうか」
「いや、ちょっと待て。これとか良さそうじゃないか?」
膨大な依頼書の山から、一つだけ気になる依頼があった。
「ゴーレム狩りですか?」
「そう、それだ」
ゴーレムとは、岩のような見た目をしている魔物。
一撃の攻撃力が強力なことに加え、防御力が異常に高いことで知られている。
とはいえ動きが非常に遅いため、攻撃を避けるのは難しくない。Eランク冒険者でもきちんとパーティを組んで時間をかければ問題なく倒せる敵ではある。
この防御力が高いというのがミソだ。
一定量以上のダメージを与えることでゴーレムの防御力を突破できるようになるのだが、防御力を突破するために何発の攻撃が必要か、あるいはどのくらいの時間の攻撃が必要なのかを知ることでこの剣の性能が分かる。
「確かにちょうど良さそうですね! でも二人で本当に大丈夫なのか心配ですが……」
ゴーレム狩りは防御力を破るために大きなダメージが必要なため、大人数で相手をすることが多い。
報酬もEランク依頼の中では最も高いというところで、ギルド側もソロ向けではなくパーティ向けの依頼として貼り出していた。
とはいえ、この剣があればなんとでもなるだろう。
最悪どうにもならなかった時は俺が付与魔法でなんとかすればいい。
「俺も一緒に行くんだぞ? 何があってもセリアを死なせるようなことにはならないよ」
「アルスかっこいいです……! 確かにその通りですね! この依頼にしましょう!」
「お、おう。そうだな」
なぜかこの言葉が刺さったようで、セリアは嬉しそうに掲示板から依頼書を剥がした。
理由はよくわからないが、納得してくれたようで良かった。
◇
それから約30分ほどでゴーレムの生息地であるベルガルム森林近くの原野に到着した。
雑草が生い茂る殺風景な場所ではあるが、灰色のゴーレムの姿がちらほら見られる。
「へー、綺麗な場所だねー!」
シルフィは新しい場所を見るのが楽しいのか、あちらこちらと自由に空を飛び回っている。
「そうか? そんなに景色は良くないと思うが……草が生えっぱなしだし」
「そういうところも新鮮なの〜! こんなの精霊の森で見たことないもん!」
まあ、ある意味ではあの綺麗な景観の精霊の森に見慣れていると、逆にこういうところが新鮮に見えるのかもしれない。
シルフィは外の世界に期待してついてきたのだし、喜んでいるのなら素直に良かったのだと思っておこう。
可愛い精霊にはエンジョイしてもらっておくとして、俺たちは俺たちで仕事をしなきゃな。
「じゃあ俺が引きつけるから、セリアは後ろから攻撃してくれ。いいな?」
「わかりました!」
セリアの返事を確認した後、俺は近くにいるゴーレムに小石を投げつけた。
コツン——と軽く衝突し、ゴーレムが俺に向かって近づいてくる。
しかし、かなりノロい。
普通に歩いても振り切れてしまうくらいには動きが遅いので、よほど下手をうたない限り殺されることはないだろう。
俺は迂回しながら前方に進んでいき、ゴーレムの身体の向きを調整する。
セリアがゴーレムの背中を狙いやすい向きになったところで足を止めた。
「いつでも大丈夫だ」
俺の合図でセリアが動き出し、ゴーレムの背中に向けて剣を振るう。
ちなみに、俺が先日教えた通りしっかり魔力を込めている。
しっかりと理解してくれているようで何よりだ。
と、ゆっくり感想を巡らせている暇などなかった。
ザンッ——!!
セリアの攻撃が当たった瞬間、ゴーレムの装甲が破壊されてしまった。
それどころか、その勢いのまま刃がスルッと入っていく。
ゴーレムは防御力が高い代わりに、生命力が驚くほど低い。
そのため、セリアは一撃で倒してしまった。
「え、もう終わりですか?」
「……みたいだな」
セリアがキョトンとしてしまうのも無理はない。
普通のEランク冒険者はパーティで何十分もかけて集中砲火し、何とか装甲を破るというのが常識なのだ。
ガイルに作ってもらった武器は、確かに強い。
強すぎるほどに強い。
だが、それだけでは説明できないほどの攻撃力だった。
「ゴーレムってもうちょっと強いのかと思ってました。意外と弱いのですね……?」
この言葉が出るということは、まだ余力を残していたのだろう。
まずは様子見の一撃だったということか。
「いや、この辺のゴーレムが特別弱いってわけじゃないはずだ」
俺は、近くにいたゴーレムを剣で斬った。
ザンッ——!!
セリアと同じようにサクッと斬ることができたが、やはり一般的な灰色ゴーレムと比べて特別強くも弱くもない。
「やっぱり……セリアが強すぎるんだ。その剣が強いことももちろんだが、その剣を使いこなせるセリアもなかなかのものだと思うぞ」
「そ、そうなのですね……! ありがとうございます!」
強い剣はそれだけ扱いが難しい。
初めてこの剣を使ったというのに、俺以上に完璧に剣の力を引き出している。驚くべき順応力だ。
さすがは剣聖といったところだろうか。
ふっ、と俺は笑った。
セリアは、俺が想像していた以上に優秀な人材かもしれない。
「よし、この感じだと一匹ずつじゃ物足りないだろう。まとめて倒すぞ」
「え!?」
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