30話目

「次の電車何分だっけ」

「10分後かな」

「じゃあ……間に合わない、よな」

「……うん。次のにする」

今から走ればきっと電車には間に合う。それは恐らく彼も分かっていた。けれど私達はその事に気付かないふりをする。

そして互いに離れ難さを示すように繋ぐ手に力をこめ、ほんの少し歩調を緩めた。

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