社畜と社畜天使
諏訪森翔
第1話
「奇麗だね」
「......ああ」
山頂から見える日の出は正月でも大晦日でもないのにとても奇麗で感動さえこみ上げてくる。
隣で無愛想に返事をした彼の方をみると自分と同じように日の出を見て感動しているらしく隈のある目は小さく見開かれ、半開きの口からは今にも賞賛する言葉が漏れ出そうだった。
「ありがとうね。こんなところまで一緒についてきてもらって」
「......仕事だから構わない。それに、こんな景色を見れるなら楽なもんさ」
「それどういう意味?」
口を尖らせながら意地悪く聞くと彼は少し困ったような顔をし、すぐに不器用な笑顔を浮かべ誤魔化そうとするのでデコピンを放とうとする。
しかし、頭を叩くだけにとどまった。
しばらくすると、息をするのも気怠くなり胸のあたりも痛くなりうずくまる。
「時間かな?」
介抱されながら浅い呼吸で質問すると彼は顔を強張らせながら無言で頷き、形式上の質問をしてくる。
「お迎えだ。悔いは無いな?」
そんなの、当たり前だよ――――
最期の言葉は口に出せず、多分弱々しい笑顔を浮かべると視界が狭まる。
少し悲しそうな彼の表情が日の出の光で塗りつぶされ、その間際に見えた彼の背中から広がる翼も見ながら彼女は思った。
ああ、なんて美しいんだろう。
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