第110話新たな開発とテスト




今や猪野研究所が作り出す物に、世間の注目が集まりだした。

人工衛星の打ち上げ成功は、日本ばかりでなく世界の注目を集めた。

開発途上国からは、人工衛星の打ち上げの話しが持ち上がっている。

既に3件がまとまりそうだと、営業部が社内で触れ回っている。


一応、常務の役職を貰った俺にも、ベトナム・ペルー・エジプトが商談相手だと、メールで届いていた。



それに対して、もう1つの事業も成功している。


JRの新幹線が上手く運営されて、所要時間が短縮されている。

更に時間短縮が可能であったが、全線の車両生産が間に合わず生産が急ピッチに行なわれている。

将来、夜間運用が考えられていて、夜間は貨物輸送に重点が置かれている。

静かに浮かんで走っているのが強みだ。

その為に、貨物の積み降ろし場の建設が東京・愛知・大阪の3ヶ所で建設中であった。




そして新たな開発が行なわれていた。

コンテナ船の製造であった。


これも構造的に至って簡単な物だった。

通常時は海で運行されて、メタルⅢで移動にだけ推進力を使う。

それでも航海速力は平均30ノット(時速約56km)で運行可能。

その為に、運行日数が半分で済む計算。


更に海賊の出没地域なら、海上に浮かび更に時速約80kmまで飛行させられる。

海賊による拿捕の危険が無くなる。

今でも発展途上国では、海賊が横行しているのが現状。


浅瀬の多い地域でも、同じようにして安全に飛行が可能。

そして最大の売りは、船舶衝突を容易に回避出来る機能だ。

船は惰性だせいで急停止や急旋回が出来ないが、このコンテナ船なら空へ回避出来るのだ。

最大出力を使えば、1キロの高さまで上がれる。

その分、魔石の消耗が激しい一面もある。



そしてコンテナ船の製造だけで終わらない。

今はコンテナ船の積荷は、巨大なガントリークレーンが行なっている。

一般的にレール上を移動する物で、門型(橋脚型)の大型クレーンである。

それが船までコンテナを掴んで運び、船に下ろしている。

港湾の岸壁に設置されて、オレンジ色に塗られた物がそれだ。


それでも積荷作業には時間が掛かってしまう。


それをAIで管理された、コンテナを掴み飛行して積荷を行なう飛行クレーンを開発中。

これが成功すれば、コンテナ船1隻に複数の飛行クレーンが働くことになり効率が上がる。




そして実物のコンテナを使ってのテストが行なわれていた。

俺はスマホでそのテストを撮影中だった。


「やはりコンテナにチップを付けての管理方法なのか?」


「今はそれでやっているよ」


「それより、コンテナにQRコードを描いて管理出来ないか?」


「それも考えているよ。明日には試作品が送られてくる予定だ」


「これって30キロぐらいで移動させているのか?」


「30キロがベストだろう。本当はもっと上げられるが安全を考慮しての運行だよ」



「和也、結構な数が見ているぞ。上には報告しているのか?」


「いくらスパイでも、見ることを禁止には出来ないよ」


「立入り禁止に進入するまで待っているのか?」


「待っていないが、警戒はしているよ」


「それで月にゆく宇宙飛行船に乗るって本当か?」


「お前にも知られたのか?誰から聞いた」


「俺の勘だよ。和也ならそうすると思うのが当り前だろ」


「そうかも知れないな」



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