第111話白のダンジョン




白のダンジョンの未確認は、チベットの山奥に1つだけがあった。

ここも険しい山に、ひっそりと隠れるようにダンジョンの穴があった。

その穴から這い出した俺は、体に付いた土をはたきチベットの景色を見ていた。

山の高い位置にある為か、人の気配は感じられない。


チベットの寺院でも見えるかと思って、地上に出てみたが、がっかりだ。

又も落盤で狭くなった穴に入って、ダンジョンの攻略を再開だ。

19階層に戻ったが、従魔らまだ戻っていないようだった。


雷撃野太刀を上段から振り下ろして、久し振りの剣道の練習をはじめる。

1時間近く振り続けて、ようやくぶれずに振れるようになった。


『親分、何やっているの』


「剣道の練習だ。中学の頃を思い出してやっていただけだよ」


『そうなんだ』


「他の従魔はどうした」


『まだまだ魔石を喰うと言って、18階へ上がったよ』


ライムと始と仁助らだけが戻ってきていた。


「そうか、後どれくらいに戻ってくると思う」


『そうだね、3時間かな』


「そうか、それならしばらく寝るから見張りを頼むぞ」


『分かったよ』


俺は簡易ベッドを取り出すと、そのまま寝転ぶとすぐに寝てしまった。




『親分!親分!』


「なんだ、お前だったのか?何時間寝ていた」


『5時間も寝ていたよ』


「ようやく全員が揃ったみたいだな」


『腹一杯喰って来たよ』


『おれっちなんか、レベルアップまでしたよ』


少しだが、リップの体が大きくなった気がする。


「それじゃ20階層を攻略するぞ」


そのまま階段を下りて行った。

通路を突き進むと、微かに旋律に乗った歌声が聞こえてくる。


「誰か歌っているのか?」


『親分、これはやばいよ』


「何がやばいんだ。分かりやすく言ってくれ」


『これは癒しの声だよ、しかし過度に癒し続けると体を破壊するんだよ』


その瞬間から体の動きが悪くなった。そして急に吐きそうな気分になってきた。


低級ポーションも連続での使用はダメだと聞いたことがある。


急いでエナジーを発動。

癒しの声が通路内を支配していたが、俺のエナジーが広がりながら癒し効果を消し去った。

体の不調も徐々に治った。

そして、歌声も聞こえ無くなっている。


『親分、最悪な歌声だったね』


「お前たちも、そう思うか?癒し効果が過度でなければキレイな声なんだろうな」


『早く倒そうよ』


「そうだな、早く倒してみせる」


その言葉が終わると同時に走り出していた。



その魔物は、白く透き通っていた。

髪の長い女で、俺を見ても薄笑いをしている。

そして急に口を大きく開いた。すると眩しく光った。

俺の前には魔法陣の盾が一瞬に現れて、光を防いでいた。


『親分を守れ!』


俺の後方に居た従魔らが、一斉に攻撃を仕掛けた。

呆気なく魔物は飛散して、跡形も無くなっていた。

地面には1枚のカードと白い魔石だけが残っていた。


ダンジョン耐性【暗】


カード鑑定には、そう書かれていた。

多分、黒のダンジョンにも入れる物なのだろうが、俺に必要なさそうだ。

カードホルダーに収納。

そして白い魔石だけを大事に貰っておく。

白い魔石は、癒し効果があり高値で売れる。レアなドロップ品であった。


『親分、帰ろう』


「どうした。我が家が恋しいのか?」


『親分は忘れたの』


「何を忘れたと言うのだ・・・そうか、今日だった」


スマホで確認して見たが、カレンダーにも今日であると書かれていた。


「皆、俺に掴まれ。すぐに我が家へ帰るぞ」


皆が掴まったことを確認して、我が家へ帰った。



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