第105話犯人を突き止めた




何やら捜査本部が急に騒がしくなった。

中国捜査員が、更に声を荒げている。

新たな血文字が発見されたらしく、行方不明になった人物が特定されたらしい。

巨大モニターに顔写真と役職とフルネーム、そして年齢が表示。

中央政治局常務委員会委員


陳涛Chén Tāo 55歳


ここから車で1時間の所に、ホテルの裏口の壁に血文字が書かれていた。

そこは、行方不明の現場から200メートルも離れたホテルだった。

送られた写真からも、同一人物の筆跡だと判断されて、更にざわついた。


3チームが立ち上がり、部屋から急ぎ出て行った。


「それでは、我々も行こうか?」


「何処へ」


「血文字のホテルに決まっている」


勝手が分からない俺らは、隊長の言う通りに付いて移動。

連絡済みなのか、ワンボックスが地下駐車場に待っていた。


運転手の王は、隊長と親しく中国語で話している。

話しの内容だと、警護の人数も通常の3倍にしていたが、身辺警護人と要人が突然消えたらしい。

無線連絡中の出来事で、車に待機していた警護人が駆け付けた時には、現場には何もなかかった。


人の少ない時間帯に、ホテル出口から出た直後らしい。


現場にもっとも近くに居た警護人も、曖昧な目撃情報で気が付いたら居なかったと証言している。

どうやら一瞬、目を離した時には居なかった。それも3人が同じような目撃情報だった。


隊長がその話を、俺達に詳しく話し出していた。

俺はその間に、色々と考えを巡らせていた。

単独犯行は難しいように思い、2人か3人の犯行のように思えた。

あくまでも俺の勘だ。



現場では、鑑識が行なわれていて、3チームの姿は見えない。

野次馬も大勢が見守っていた。

野次馬の考えは《例の偉い人が殺されたらしいと、他愛もない話の内容だった》。

どうもこの中には犯人は居なかった。


「鑑識が終わったみたいだな」


「俺には、人が大勢いた現場では、匂いが氾濫はんらんし過ぎて特定は無理だ」


「それなら、俺の出番だな。この血文字は触っても良いのか?」


「触ってもいいぞ」


小林は、そっと触った瞬間にイメージが鮮明によみがえってきた。

男はぶつぶつと独り言を言いながら、筆に血を付けて書いていた。

後ろから別の男が話し掛けていたが、それを無視するように書く事に夢中で、書き終わってようやく振向いた。


その男は20代の男で、声をしずめてなじるように言い返されて、うつむいて耐えている様子だった。

そして、男の泊まって居るホテルの映像が見えた。


消えた現場の向かいのホテルで、303号室だった。



現場に居た捜査員が集められて、向かいのホテルへ急いだ。

ホテルの裏口には8人を配備。

ホテルロビーに20人の捜査員が待機。

応援要請で増員されるまで待機と、上からの指示だった。


「部屋に帰っているのは、間違いのないのか?」


「受付の証言だと、帰っているようだな」


「段取りは、どうなっているの」


「俺らと10人の武装員で、部屋に訪問して顔確認してからの射殺らしい」


「即射殺なの、逮捕しないの」


「既に死刑確定の犯行で、逃げられたら大事だ。相手の能力も分からない以上仕方ないな」



俺には、2人が言い争いをしている風景が見えていた。


「兄さん、もう危ないことはやめよう」


「お前は、俺達の親がどれだけ苦しんで死んだか分かってない」


「俺は、兄さんが心配なんだ」


「俺は死んでもやりとげると誓ったんだ。お前も悔しくないのか?」


「悔しいよ・・・」



そんな時に、あの3チームがロビーに現れた。

隊長と向こうの代表が言い争いをしている最中に、ロシアチームのトーンが上がりに上がっていた。

もちろん、俺は分かっていたが、皆は煩い奴だとうんざりした顔をしている。


そんな中に、EUのチームが割って入った。

どうやらロシア語も日本語も話せる女性のようで仲裁をしている。


南雲はようやく汚い言葉だと理解して怒っている。

そんな騒がしくなる中、アメリカのスワットチームばりの、特殊武装した20人が入ってきた。


この場の指揮者が、隊長と武装部隊の隊長を呼び作戦を伝えてた。

10人は階段へ向かい、俺らはエレベーターで3階で降りた。


10人が見守る中で、小林がノックをして待っていた。

中からは反応はない。再度ノックしたがその瞬間に中の気配が消えた。

合鍵で開けて入ったが、誰も居なかった。


俺は素早く走り出しながら、「屋上へ逃げた」と言い放った。

皆が見ている中で、ワープを使って兄弟の所へには行けない。

階段を駆け上がりながら、見えない場所で一気にワープして屋上に到達。



屋上では、声の音を落として兄弟で話し合っていた。

俺はそんな弟の横に現れて、後頭部を叩き気絶させて、兄に蹴りをぶちかました。

しかし何かに防がれて、兄はニヤリと笑った瞬間に吹き飛ばされた。

それは何か衝撃のような物で、一瞬の出来事だった。

魔法陣の盾が現れてダメージは無いが、相手との距離が開いた。


「仕方ないな、やってやる」


俊足を発動。俺が居た地点が突然に、ミシッと音がして陥没が起きていた。

兄に雷撃野太刀を振り下ろしたが、又も何かが現れた。

そして雷撃の火花が見えない壁に阻まれていた。


その壁が、催眠や幻魔なども防いでいるみたいだ。


エナジーを発動。

相手の攻撃がエナジーによって無効化されて、兄を守る壁も無効化。

兄に触れた瞬間に、崩れ落ちて倒れた。

倒れた場所は、弟の近くで弟をかばうようにして抱きついていた。

2人が死んでいることは、気配で感じ取っていた。


その数秒後に、体を駆け巡るように記憶を感じ取っていた。

レベルアップとスキルを取得。



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