第96話相撲




俺らの報酬は1億円だったが、テロを未然に防いだことで追加ボーナスで1億円が増えた。

何でも、官房機密費から支払われるらしい。

総理が自由に使えるお金だと、南雲のおっさんが言っていた。

そして狙撃犯逮捕の事件からようやく解放。

短い時間だが、このグループも解散。



神戸空港のタクシー乗り場で、タクシーに乗って猪野第2研究所へ向かう。


「お客さん、猪野第2研究所の関係者ですか?」


「ああ、そうですよ」


「わたし、鉄道マニアでして新月をカメラで撮ったんです」


「見せて貰えますか?」


「はい、これです」


ファイルになっていた写真を見た。

成る程、白の車体に黒のラインが入っている。

このラインで夜の新月をイメージしているのか?


これは、新神戸駅に停まった瞬間の写真か?

プラットホームの下に窓があり、上にも窓があった。

2階建て車両で、先頭の新幹線の顔は鉛筆の尖ったような形をしている。


見た感じは良さそうだ。


「お客さん、着きましたよ。人が多くて先に進めませんね」


「本当だな、ここでいいですよ」


金を払い、タクシーから降りた。

どうもマスコミの連中が門の前で撮影して、男がマイクを持って話している。

それ以外にもカメラを持ったカメラマンが、脚立に乗ってずらりと並んでいる。


これで俺が正門から入れば、顔ばれしてまずい。

和也に電話して、猪野第2研究所の前に居ることを伝えた。

和也もすぐに理解したのだろう。ここから10分のサニー喫茶店で待ち合わせた。


事前に取り出したキャリーバッグ2つを、押しながら店に入って待っていた。


「ごめんごめん、待ったか?」


「頼んだ紅茶が来たばかりだよ」


「そのキャリーバッグに入っているのか?」


「ああ、入ってるよ」


「これを車に運んでくれ」


後ろに控えていた男性3人の2人が、キャリーバッグを持って店の外へと出て行った。

俺は目線で後ろの男は誰だと和也を見た。


「俺の警護担当をしている人だよ」


「そんな状況に成ってたのか?」


「お前は、どうしている」


「冒険ハンターの依頼をこなして、ダンジョンにも入っているよ」


「イヤ、そうでなくて桂瞳かつらひとみのことだよ」


「何を言っているんだ。彼女はただの幼馴染だ。それ以上それ以下でもないよ」


「昔から鈍い奴だと思っていたよ」


「大変です、マスコミが嗅ぎ付けたみたいです」


「又、メールで連絡するよ」


「来たばかりなのに、もう行くのか?」


「悪い、ゆっくりして行ってくれ。マスター、注文は全部研究所につけてね」


和也は急ぎ店から出て行った。

俺もマスターに断って裏口か出てゆき、車に群がるマスコミを見ていた。

俺は和也も大変だなと思いつつ、その場をさった。




そして夕暮れ前に我が家へ戻れたが、従魔ら露天風呂に居た。

もしかして居続けたのか?


「お前ら、あれからここに居続けて居ないよな」


『え!居たよ』


『リップが水風呂から動かなくて、親分助けてよ』


「ピーも水風呂が好きなんだな」


『好きだけど、水シャワーがもっと好きだよ』


「もしかして、あのシャワーも出しっぱなしなのか?」


『そうだよ、すぐに浴びれるようにと思って』


仕方ない、従魔に節約の観念はないみたいだ。

カードからスラ達を念じて呼び出した。


スラ達の活躍の場は無かったが、無いに越したことはないだろう。


始や五郎は早速、露天風呂に飛び込み、始は器用に泳いでいる。

それと間逆に五郎は沈んだままで、全く何処に居るのかも分からない。


他のスライムは以前見た、相撲をして押し合っている。

押し合う時に、微かに光りを発するのでどうにか見ることが出来た。


それに対して対抗意識に芽生えたのか、ピーとライムが相撲をとり始めた。

まさに火と水の相撲だ。

次第に相撲が激しくなり、俺がピーとライムの中に入って止めた。

周りに水蒸気が立ち込めて、蒸し暑くて堪らなかった。


『親分、どっちが勝った』


『おいらか?』


困ったな・・・


「ピーとライムも勝ちだ」


『勝った』


『おいらも勝った』



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