第93話座標ポイント




ハゲタカの戦いからしばらくして異変が起きた。

目の前から危険探知の警告音がして、すぐに消えたのだ。


「皆、危険が迫っているから気を付けろ」


『わかったよ親分』


先頭に居たリップが一瞬で見えなくなった。

そして俺の足元が地面へ吸い込まれるが、疾風のブーツで見事に脱出に成功。

しかし俺の下ではスライムらが、すり鉢状ばちじょうの地面へ滑り落ちて行く。

その時にようやく現状を認識した。

眼下ではアリジゴクの巣が広がっていて、中央に2本の大顎おおあご待ち構えて居た。


ツタはグフに助けられて、グフの足に垂れ下がっている。

リップは太い根の下に障壁を張って、自力で脱出したようだ。

俺は急いで降下して、次々にスライムらを掴んで救出。


そこへメタルボディのアリジゴクが飛び掛ってくる。

右手に掴んだピーが、火球Ⅱを2つ発射して、頭部と胴体に大きな穴を開けて仕留めた。


何が起きたか焦ったが、呆気ない程に簡単に戦いが終わってしまった。

そして、俺は魔石とカードと手に入れた。


メタルⅤ


硬く軽い金属

地中を自由に動ける


地中を自由に動けるとはどうような意味だ。

これも猪野研究所に丸投げでいいか?



そしてしばらく歩き続けていると、遠くの草原に人工物がそそり立っている。

急いで近くに寄ってみると、白い五角すいが地面より5メートルも伸びていた。

表面には細かな判別不能な文字が、びっしりと刻まれていて、俺はその文字を触ってみた。


【座標ポイントを確認しました】


その言葉が脳内に響いてきた。そしてようやくこれの意味を知った。

ダンジョン内へのワープは、基本階段しか無かったが、これはここへワープ出来ると伝えてきた。

今後、地上からここへ一気にワープが出来るのだ。

これはありがたい機能だ。


この機能があればいつでもここからスタート出来るから、今日はここで引き上げるか?


「皆、我が家へ戻るから掴まれ」


『まって、まって』


『OKだよ』


『いいよ』


皆が掴まったので、我が家に一気に帰った。

いつもの手順で結界オーブを張って、従魔らを見え無くしておいた。

何気にテレビをつけると、たわいも無いニュースが流れていた。

身に付けていた防具類を脱ぎ始めた時に、緊急ニュースですとテレビから聞こえた。

緊急ニュースでアナウンサーが原稿を読み上げている。


「只今入った情報によりますと、総理大臣が撃たれたようです。ご覧ください救急車へ運ばれている様子です。アメリカ訪問からの帰国で空港出口で撃たれたと情報が入ってます」


撃たれたのか?警護の人間は何をしてたと攻められるだろう。

中国の事を思い出して、そんな事を考えていた。




露天風呂に浸かり、ノートパソコンでメールを確認。

やはり猪野研究所からメールが届いていた。


【試作品の完成】


試作品の車両の正式名称【新月】に決まったよ。


前回のテスト走行時が新月の日に行なわれた事から【新月】にした。

俺は結構気に入っているぜ。


夜の走行も順調で、今は500キロで走っていても車両には問題ない。


インゴットを宅配で送ってくるな、もっと大事に扱ってくれ。

連絡すればすぐに取りに行く。


×月×日 猪野和也より




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