第8話リップの誕生




スマホのアラームがうるさく鳴り響く。

うるさいと思いながら手を伸ばすと何かが違う。

ゴツゴツとした地面の感触が伝わり、あ!そうかダンジョンに居る事を思い出した。

上体を起こして、周りを確認。

スラとライムが近くに居て心配そうに見ている。

足に触れるこの感触は、足元に何かがある。

何だろうと起き上がるとカードと魔石が乱雑に置かれていて、手で取って確認。

なんとフローディアカード10枚と木の実カード11枚。

そして見たことも無い赤く大きな木の実カードがあった。

このカードは何なのか分からない。見た目は毒々しい木の実カードだがカードホルダーに入れ保留。


木の実カードを1枚1枚収納すると、10枚で突然変化して1枚のカードに成った。

不思議に思いながら取り出して確認。

普通の木の実は1センチの大きさだが、このカードは3センチ程の大きさに木の実が描かれている

この木の実の効果はどれ程の効果が有るのか不明だが、自分自身で試すしか今のところ効果の確認が出来ない。

大きな木の実カードを具現化させると、生唾をゴクリと飲み込み、恐る恐る口の中に放り込む。

しばらく噛むと、味はカシューナッツと同じ味がして美味しい。

そして体が光りだした。


「ステータスオープン」


青柳誠あおやぎまこと


Lv10


HP100+50

MP50


STR5 VIT3

DEF3 INT4

DEX4 AGI5


固有スキル

カードマスター

カード化・カードホルダー・従魔


魔法スキル

黒魔法


攻撃スキル

スラッシュ


支援スキル

魔物探知


なんとHP100だったのが+50が追加されている。

ネットでは通常木の実で+1だと書き込まれているのに、50倍の効果を表している。

これを単純に値段換算すれば5千万円にもなってしまう。

実際はどうなるか、ギルドオークションに掛ければもっと高くなる可能性も考えられる。

上級冒険者は皆、レベルが上がり難くなりそれに代わる強さを探し求めている。

その1つが木の実で、その為値段が高くなり買い取っているのも上級冒険者が大半。


ドキドキしながら、次のフローディアも同じく1枚1枚収納。

そして1枚のカードが誕生。

取り出して見ると、チューリップの赤い花が大きく描かれて、大きな根が4本と細い根が10本も描かれている。

それと大きな葉が4枚。このまま見ていても仕方ない。

カードを放り投げて、具現化するイメージをする。

現れた花は高さ2メートルで4本の大きな根を使って歩き回っている。

コイツにも名を付けないと・・・


「お前の名は、リップだ。理解したなら返事をしろ」


細い根を振りながら、返事をしている。

そして大きなチューリップの花を上下にして喜びを表現。


俺はその時、見てしまった。

あの花の中に、鋭い歯がすりおろし器状に並んでいるのをハッキリと見た。

俺は想像した映像を振り払う様に、首を振って忘れることにする。


その時に腹が鳴り空腹だと感じ、携帯食をむさぼる様に食べて、水もゴクゴクと飲み干す。


階段で物音がするので見ると、ピーとキーが帰って来た。

ピーは俺の前で、又ポロポロと吐き出した。

魔石と木の実カード12枚とフローディアカード2枚。

木の実カードをカードホルダーに1枚1枚収納すると、大きい木の実カードが誕生。

これは時期を見て、ギルドオークションに掛けよう。

凄い妄想が頭の中を駆け巡る。



村の冒険者は6階層と7階層で戦っているハズなので、4階層はピーとキーのコンビに任せるのも良い。

俺らと一緒の時より、討伐数も多いしカード化させる率も高い。


「ピーとキー、お前達は上で好きなだけ戦って来い。分かったな」


2匹は跳びはねて、階段をトントンと跳ねて行ってしまう。

よっぽど4階層が気に入っているみたいだ。


残った従魔に向かって、


「今日は5階層で戦うぞ」


リップだけが根を振って反応するが、スラとライムの反応が薄い気がする。

どうやら転がっている魔石が気になるみたいで、もしかしたら食べたいのか?


「食べたいのなら食べていいぞ」


言った瞬間に魔石にとび込み食べだしている。

リップも細い根で掴み食べている。

今後、魔石を食べさせる方向で考えないといけない様だ。

もしかして、ピーとキーも食べていたのかもしれない。

その為、4階層へ行きたかったのか?



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