『ゆうれいマッサージ』 2

やましん(テンパー)

『予約』


 『あ、やましんさん、で、肝心のマッサージ。予約するね。』


 幸子さんにしては、しっかり覚えていたか。


 『いま、ジョージさんっていう、じょーじあたりで、かつては、カリスママッサージ師といわれたゆうれいさんがいるのよ。生前は、一回一万円とかだったらしいけど、いまは、お線香一本でOKよ。明日の晩、12時でいかが?』


 まあ、自分が撒いた種であるから、断るわけにはゆかないし、幸子さんが入ってるなら、ま、いいか。


 


    ・・・・・・・・・・・・・・



 というわけで、翌日の深夜12時が近づいた。


 言われたように、お線香一本を焚いて待っておりました。 


 すると、時間ぴったりに現れたのです。


 白衣の、かなりな、大男。


 眼光鋭く。まなじりすっきり。


 プッチーニ髭がありまして、ちょっと、怖そうな。


 しかし、彼は、穏やかに、こう言いました。


 『こんばんはー。本晩はご予約くださいましてありがとうございました。ジョージと申します。よろしくお願いいたします。さて。やましんさんですな。』


 『はい。』


 『わーかりました。幸子さん直々のご依頼なので、ばっちり、身体中をほぐしてさしあげましょう。』


 『あの、腎臓とか、管も入っていたりしますから、緩めにお願いいたします。』


 『わーかりました。では、うつむきになりましょう。はいはい。いちばん痛いのはどこですかな。』


 『あの、肩と、背中のつながり部分。せなかたと、言いましょうか。』


 『せなかた。おー。あたらしい、用語ですね。たぶん、僧帽筋あたりから、ここあたりか。これ、いかが?』


 うあ。かなり、強い力がきたあ。


 『あ、もうちょっと、下かな。』


 『なるほど。ここは?』


 『うぎゃー。い、痛いです。』


 『なあるほど。かちかちですな。なにやったら、こんなに、固まりますか?』


 『さああ。この世のすべてかなあ。』


 『はー、は、は、は、は、は、あ。なるほど。この世はつらい。よくわかりますよ。ぼくも苦労したからね。あい、ちょっと、まげます。』


 『ぎわわわ〰️〰️〰️〰️〰️。』


 『かっちかち、ですなあ。はい、反対側。』


 『ぐぎょわ〰️〰️〰️〰️。』


 『はいはい、これは、手強いですなあ。長年やったなかでも、最高級です。』


 『最高級でしか?』


 『はいー! やりがいが、あります。よいしょ。』


 『ぎえ〰️〰️〰️〰️。』


 『ふうん。これは、どうしますかなあ。いっぺん、分解して掃除して、組み立てると、かなり、良くなるかも。』


 『いえ、分解はやめましょう。気長に。』


 『はあ。いいっすよ。ね。気長には、ね。』

 

 ジョージさんは、なんとなく、意味深に言ったのだ。




  ・・・・・・・・・・・・・・・・・



     連載にいたします。


     


 


 

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