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彼らとの話を聞き終えてから更に一日。
乗合馬車は一応の中継地のレスタートンの街へ到着した。中継地と言っても僕たちの中継地であるだけ。ここが終着点って人もいるだろうけどね。
さらに先に進むには乗合馬車を乗り継ぐ必要があるけどね。
そこで彼らとは別れて宿へと向かった。
当然、次の馬車を見つける事も忘れない。そこで運よく、翌日に南へ向かう乗合馬車が出ていたので予約しておいた。
「それにしても
僕は宿を探すべく街へ歩き出してすぐ、ぼそりとそんな言葉を漏らした。
まぁ、被害も襲われた冒険者の
「そうね。でも
「え?襲ってたじゃん」
フラウが真面目そうな顔をして僕の呟きに答えてきたが、彼女の言葉には首を捻るしかなかった。フラウの言葉に反して、襲われていたと思うのだが?
もしかして、僕は盲目状態に陥っていたって事?そんなこと無いよね。
「アレは襲ってるって感じじゃなかったわよ。第一、
「どういう事?」
僕は更に首を捻ることになる。
何か首を捻ることが多いな。
疑問が解けなければ首を一周回してしまう事になるぞ。
確かに、言われてみれば殺気は感じられなかったと思う。
思うってのは思い出してみてって事だ。
仮に、あの時トロールに襲われていたとしよう。
冒険者を始末した後に僕らを見つけ、問答無用で襲ってきていただろう。
腹を空かせなくても僕らを食料とみなして、食欲に似た殺気を発したはず。そして、それに
その状況が全く無かったのだ。
何か理由があったのだろうか?
もしかして、フラウはそれを言いたかった?
「殺気を感じなかったのもそうだけど、手加減していたような気がするのよね」
「
「あるのよ。そう感じたのよ」
外れる事が多いけど、フラウの直感は時折当たることがある。それも、重要な時ほど当たる。どうでも良い時に外れるのは愛嬌なのか?
それは置いといて……。
「何となくだけど、目的があって冒険者を襲った気がするのよ」
「理由がある。例えば……?」
「そうね、例えば……」
目的がある。
と思いながら、フラウの言葉を待った。
「そうね、森の奥に進ませたくないとか?」
「何のために?」
「さぁ?」
さぁ?って……。
直感に頼っている分、思考するのは苦手なんだよね、フラウって。
彼女の言葉に僕は脱力するしかない。
いや、脱力してこのまま地面に四つん這いになっても良いと思う程だ。こんな往来の真ん中でする気力は無いからやらないけど。
「フラウに答えを期待した僕が馬鹿だった。話半分に聞いておけば……」
「それ、酷~い」
酷い、じゃないよ。可愛そうなのは僕の方だよ。
肩を落としてガックリしている僕をフラウはポカポカと叩いてくる。
うん、なんだろう。この茶番。
とりあえず、気をとりなして宿に向かう事にしよう。何となくだけど、さっさとベッドに潜り込みたい気分だ。
「……フラウの意見は覚えておくことにして、宿に向かおうよ。何となく疲れた」
「う~ん、腑に落ちないけど……。まぁ、いいか。ワタシも何となく疲れたわ」
僕とフラウの”疲れた”って意味が違いそうだけど、ベッドにも潜り込みたい気持ちは同じらしい。
僕は気力を振り絞って今日の宿を探す為に足を動かすのだった。
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