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僕たちはウェールの街で二泊し、南へ向かう乗合馬車へと乗り込んだ。
久しぶりに戻った拠点で僕とフラウは一日だけ、甘い時間を過ごした。もう一日はお休みです。
で、何をしていたかって?それは聞かない約束でしょ。
デートしかしてないぞ。
夜の生活?
いやいや、乗合馬車は結構早く出発するからちょっとだけだ。
って、何言わせるんだよ!プライベートは詮索しないの!
「コーネリアス。今回はあの冒険者は乗ってないみたいね」
馬車に乗って少し経った所でフラウがそんな事を僕に呟いた。
そう言えばそうだな。
あまり気にしてなかったけど、四人組の冒険者の姿は見えない。僕たちの他に数人乗っているけど……。
と、誰の姿も見えないって事は、ウェールの街が目的地だったんだな。
でも、冒険者ギルドの掲示板には危険な魔物が現れるって情報は乗ってなかった。いったい何が目的だったんだろう。
まぁ、余計な詮索はしないことにしよう。
とりあえず、今はフラウとの旅を楽しむことにするよ。
「で、アレクシアまで何日かかりそう?」
「そうだな……。何も無ければ八日位だけど……」
ウェールの街を出発した今、次のレスタートンまでは二日ほど。歩くと三日だけど今回は馬車だからね。ちょっと早い。
それから大きな街を二つほど経由するから、乗り継ぎが全て上手く行ったとして更に六日。だいたい、八日掛かる……んだけど。
「って、事は何日か余計にかかるから倍は掛かるわね」
「そこまでは掛からないんじゃないか?六日は余計に見ておいた方が良いかもね」
経由の街で二日づつ足止めされるとしたら六日余計にかかる。
から、十四日程度……。
と、見ておいた方がいいな。
「到着まで暇ねぇ……」
「寝ていてくれていいぞ。寝顔を見るのも楽しいからな」
「……(赤面)」
ふふ、フラウの顔が真っ赤だ。
あの仕草が可愛いんだよね。
二つくらい年上だった筈なんだよね。
あれ?三つだったかな。
女性に年齢は聞いてはいけない。
後で確認するけどね。
一応ね。
「なんか、失礼なこと考えてそうだけど?」
「うん、気のせい、気のせい」
何時も抜けてるフラウだけど、こんな時だけ勘が鋭いんだよね~。
何でだろうね?
それはともかく、ウェールの街を出発して順調に馬車は進んで行く。
日が傾きあと数時間もすれば日没になるだろう。
今日泊るのは名も無き小さな村。
とは言いながらも停車場を兼ねているのでそれなりに賑わっている。
乗合馬車と提携した宿屋で酒場もある。
それほど規模は大きくないけど、ベッドで横になれるのは大きい。
って言っても別料金が掛かっているんだけど。
乗合馬車に宿の料金は含まれてないのか、って?
馬車の乗車券を買う時に宿の料金を含めるのか聞いてくるぞ。
だから、泊るのは半々って所だろうな。
ちなみに僕たちは宿の料金を払っている。
だって、格安で泊れるんだもん。
市場の半値、って所かな?
それだったら泊ったほうが得でしょ。
食事代金は別だけどね。
そんな事を思いながら僕は車窓から外をぼんやりと眺める。
フラウは口から涎を流しながら鼾を掻いている。
何時もの光景だ。
ヴィリディスが居ても、居なくても、変わらんな。
当然、他の乗客がいてもね。
だけど……。
「……はっ!」
フラウが突然目を覚ました。
僕が肩をちょっと揺すっただけじゃ起きないのに、何なんだろう。
って、このタイミング?
えっ?
フラウに奪われていた視線を取り戻し、車窓から外へ視線を移す。街道から少し離れた場所に見える木々が見える。そして、その木々が不自然に揺れ始める。
フラウじゃなくても何かが起こり始めていると気付くだろう。
僕はその光景から嫌な予感を感じるのだった。
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