-3-
「久しぶりな気がする……」
「そ、そうね」
僕たちが立っているのは何処でもない、ウェールの街だ。
その中心広場。
それは何処だって?
決まってるだろう。僕が祝福の儀を受けた街。そして、ヴィリディスやフラウと出会った街だ。これでわかっただろう?
最初に拠点としていた街に久しぶりに戻ってきたんだ。
変わらぬ街並みを眺めて感慨深い気持ちになるのもわかってもらえると思う。
一年以上はここを離れていたからね。
そう言えばエンフィールド王国の各地を旅したけど、
でも、直ぐに出発しなきゃいけない。
急ぐ旅じゃないから、数日は街に滞在しても良いんだけどね。
街に居たら根っこが生えて旅に行きたくなくなる……なんて思うかもしれないから、出発してしまおうとなったのだ。
「それで、これからどうするの?また乗合馬車」
船に乗るにはウェールからさらに南に向かわなければならない。
大きな街数個分、だから、恐らく二週間程度かな?
まずはレスタートンの街を目指すとして……。
「とりあえず、乗合馬車で良いんじゃないかな?一番最短だと明後日だね」
停車場で予定表を確認すると明後日に馬車が出るとある。
料金もそこそこリーズナブルだから、それでいいんじゃないかな?
歩いて向かっても良いけど、二人だと不審番は大変だからね。
「じゃ、それでいいわ。予約を入れておきましょう」
「だな」
僕たちは明後日に出発する乗合馬車を予約して今日、明日と泊まる宿に向かう。
宿は以前使っていた場所とは違う宿を利用する。
何故かって言うと、前に使ってたのは長期滞在向けの宿だからね。
スポットで一日、二日程度なら、それなりの設備が整った宿の方が快適だ。ちょっと高いけど、ベッドも布団も料理も質は上だしね。
その宿も、この街を拠点にしていただけあって直ぐに目星を付けられるってのはイイよね。
ここまでは順調。
これからも順調。
と行きたいところだけど、目星をつけた宿に向かう途中、口論している若者を目撃した。
口論しているってことは意見が対立して、自分の意見を押し通そうって行動。知らない仲であれば殴り合いの喧嘩になる可能性が高いが、見るからに冒険者風だから知り合いだよな。って、よく見たら乗合馬車で見た冒険者たちみたいだ。
僕より一、二歳若いくらいかな?もっと?
冒険者になりたてだろうね、あの風体は。
そう言えば、馬車でも口論をしていたっけ。
あの時に結論が出たんじゃないのか?
とは言え、僕たちには関係が全く無い。ホントにこれっぽっちも。
乗合馬車に乗っていたから知り合いじゃないかって?
まさか。
相手は四人。僕たちは二人。
相手にしないのが吉ってもんだ。
だから、僕たちは口論している冒険者の横をすたすたと抜けさせてもらった。
横を通った時にちらっと口論の内容を耳にしたけど、まぁ、下らない事で揉めてたね。
どのグレードの宿に泊まるのかって。
依頼を問題なく解決出来たらグレードを上げれば良いんだけど、それがわかった居ないらしい。
って事は本当にルーキー何だな。
危なっかしいから少しばかり世話を焼いても良いけど、まぁ、一度痛い目を見ればわかるだろう。どの宿に泊まるかって口論だから失敗しても死にはしないだろうからね。
命に関わる事だったら無理言って間に入らせてもらうけど……。
「まぁ、死にはしないだろうから、一度経験してみると良いんだよ」
「コーネリアスも経験済み?」
「まぁね」
宿のグレードはお金を持ち合わせていないときは、まだ見ぬ収入を当てにしてはいけない、って痛いほど経験した。僕の場合はあくまでもお金がないんじゃなく、貯金を崩さずに冒険者活動をしようとしていたから、何とかなったけど……。
で、彼らはしっかりとした蓄えなど無いだろうに……。
経験をしっかりと積んで、良い冒険者になることを僕は望む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます