第4部
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一蓮托生。
そんな言葉がぴったりだと思う程、王立高等教育学院で遺跡研究の第一人者、クリガーマン教授からの特別な依頼が増えた。
増えたというよりも殆どが教授の依頼だ。教授の依頼しかやってない……と思う程。
それでも、その合間合間に冒険者ギルドで張り出される依頼もこなしているが。
エンフィールド王国の王都を中心にして東へ行っては遺跡を探し、北へ向かっては巣くっている魔物を討伐し、南に向かっては崩れてきた遺跡で生き埋めになりそうになり、西へ向かっては教会の調査団と鉢合わせしたり……。
この一年非常に忙しかった。
忙しかったが、無駄な事などなく僕の剣術の腕もそれなりに上がり、ヴィリディスやフラウも自身の技術が上がったのを実感したほどだ。
そして、教授と共に過ごす事により、しっかりと給料じみた依頼料を貰っている。
だから、みんな貯金は出来ているから万々歳である。
……。
と、言うか、教授に良いように使われてない?
それはともかく……。
「オレは暫く、教授と研究に入る」
一蓮托生だったクリガーマン教授。
その教授が一年間、現地調査を行ってきて膨大な資料が手に入った。当然、量が量だけにそれらを調べられる訳が無い。だから、これから資料の精査に張る訳だが……。
そこに突然湧いてきたヴィリディスの言葉。
教授を手伝い資料から真実を導き出す、と息巻いている。
僕たちとしてはヴィリディスの離脱は非常に痛い。
二人では満足に依頼をこなす事は出来ないだろう。特に魔物退治は三人で連携していたから猶更だ。
そして、ヴィリディスが離脱してすぐに戻って来れるとも思えない。
教授の研究はかなり奥が深い。
一年で終わる可能性もあるが、それは淡い期待と言うやつだ。
「とりあえず、金はあるんだから行きたい所に行ってみたらどうだ?まだ見た事無い場所もあるだろう」
ヴィリディスが離脱するのは決定事項らしい。
まぁ、彼が居なければ安定した収入を得る事は難しいだろう。
他のパーティーに合流しようとしても……。フラウがどう思うか。
過去にはヴィリディスとフラウ以外全滅した憂き目に遭遇したこともあったし。
そう考えるとフラウと二人、ぶらりと旅をしてみるのもいいかもしれない。
簡単な依頼をこなしながら目的地を目指し、そして、楽しんだ後戻って来る……と。
どうかな?フラウ。
と言うわけで尋ねてみたんだけど……。
「一年、働きづめだったからゆっくりするのも良いんじゃない?そこそこお金も貯まってるし……」
うん、フラウもぶらり旅に賛成みたいだ。
なら話は早いな。
「分かった。ヴィリディスはクリガーマン教授と研究に励んでくれ」
「オレの頼みを聞いてくれて助かるよ」
「分かってると思うが、研究を手伝うだけじゃないぞ。教授のボディーガードもして貰うんだからな」
「分かってる」
研究に没頭できるとわかってニヤついた顔をしている。それほど嬉しいか?
冒険者なんかやってないでそっちに軸足を移した方が良いと思うけど。
でも、冒険者は辞めないんだろうな。
ズルい奴だ。
だからって訳じゃないけど、クリガーマン教授は命を狙われる可能性がある。まぁ、ヴィリディスも同じだけどね。
ただ、年齢や実力を考えると、ヴィリディスが不覚を取る事は少ないと思う。
「で、コーネリアスは何処へ行こうと思ってる?その顔を見ると行き先の候補があるようだが?」
結構鋭いな、ヴィリディス。
確かに候補は幾つかある。
そのうちの一つがフィナレア公国だ。
それ、何処だって?
聞いたことあるでしょ。
物語など書籍を大量に娯楽として輸出しているあの国だよ。
東の隣国の南に位置する大陸から突き出たあの国だ。
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