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 冒険者ギルドで朝の喧騒を横目に見ながら朝飯を済ませた僕たちは、クリガーマン教授が務める王立高等教育学院へと向かった。


 冒険者ギルドの喧騒がひと段落したとは言え、目覚めたばかりの街は商人や職人が忙しそうに動き回り、別の喧噪が訪れようとしている。

 僕たちには関係無いかと思うかもしれないけど、利用するお店の従業員だったりするので無碍にしてはいけないよ。と言うか、しないし。


 その街の喧騒を横目に見ながら、学生たちが集まる王立高等教育学院へと向かう。

 登校中の学生を観察していると欠伸をしながら、眠い目をこすりながら、やる気のない学生が多く見える。

 大丈夫か?

 学生は勉強が本分だろう。


 ……。


 まぁ、勉強を夜遅くまでしていて眠いのかもしれんから下手な事を言うのは止めよう。


 そして僕たちは王立高等教育学院の事務室へ到着し、クリガーマン教授を呼び出してもらうのだが……。


「教授は呼んでも出て来ないのです……。めんどうなので直接伺ってもらえませんか?」


 教授は研究室に籠りっきりで呼び出しを掛けても出て来ない。時折、姿を見かけるけど疲れ切った様相だと言う。

 何かに取り憑かれたように研究に没頭しているんだろうな。


 何となくだけど、痩せこけて目の周りに隈を浮かべているのが思い浮かぶ。

 多分、そんな風にはなってないと思うけど。

 そんな事を思いながら、事務員さんに促される様に教授の研究室へと向かうのだが……。


「えっと、想像がホントになった……」

「コーネリアスが何を考えていたのかわからなかったが、今理解した」

「なんか失礼な事、考えて無いか?」

「ぷぷぷっ!」


 僕たちの目の前にはクリガーマン教授がいる。

 見た目は白衣を着て髪の毛をボサボサにした研究者然としてるように見える。本当の研究者なんだけど研究者然と見えるのは何故だろう?

 胡散臭い、とか、偽物だ、とか、そんな言葉が脳裏に浮かんでは消えて行く。


 で、教授の格好が僕が思い描いた格好そのものだったから、思わず感心して声に出してしまったのだ。

 それを聞かれてしまい、教授が反応したのだ。

 良いか悪いかは置いておいて、印象に残ったのだけは確かだ。


「それにしても、良く起きてましたね。オレはそのソファーで高鼾を掻いているのかと思ってましたから」


 僕もそう思った。

 書籍や資料に囲まれて夜明け近くまで格闘し、ついさっき寝入ったばかりだと。

 ソファーじゃなく、床に突っ伏して寝ていると思ったのがヴィリディスの考えとちょっと違うけど。

 ん?余り変わってないって。

 そうかなぁ……。


「まぁ、研究に没頭しているのは確かだ。だけど、そろそろお前たちが帰って来ると思ったから徹夜は止めて、日付が変わるまでにしていただけだ」

「教授にしては考えましたね」

「いつまでも考えない私ではないぞ」


 胸を張ってフフンとどうだと言わんばかりの表情をして見せる教授。

 いや、その表情を見せられても困るんですけど。

 もう、老人と言われても不思議でない年齢で考えなしに徹夜をする方がどうかと思うのですよ。

 まぁ、こんな人達がいるからこそ、様々な謎が解明されるのだが……。


「それは今はいい。貶されたことも問題ない。では聞くとしようか……」


 教授の表情がいつも通りに戻り、幾分か目の周りの隈が薄くなった気がした。気のせいだろう。

 そして、教授の机へと歩み寄り、どっかと椅子に腰を下ろすと顔の前で手を組みヴィリディスの報告を待つ。

 それだけ期待していたのだろう。


「では、調査の報告をします」


 ヴィリディスは鞄から紙の束を取り出すと、教授の目の前に差し出した。

 あれ?あんな紙の束、何処で作ったのだろうか?

 馬車の中だって?

 揺れる馬車でよくやるよ。


 そして、ヴィリディスの報告が始まった。

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