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 遺跡調査を終え、帰り道では岩食い蜥蜴ロックリザードに追い掛けられ、這う這うの体でパドゥムの街へとたどり着いた。

 遺跡の調査に魔法陣の働きなど、非常に収穫が多く有意義だった。

 と、感じているのはヴィリディスだけかもしれない……。


 いいんだよ、僕たちは。

 ヴィリディスが満足すれば。

 あとは報告を聞くクリガーマン教授か?


 で、満足したヴィリディスは今、宿で高鼾を掻いている。隣の部屋からでもしっかりと聞こえる位だから余程疲れていたんだろうね。

 朝食を終えた時間だと言うのにねぇ……。

 いまだに目を覚まさない。


「休ませておこうよ。目の周りが真っ黒く見えるくらいの隈だったじゃん」

「確かにそうだな……」


 遺跡を出発する時にはまだヴィリディスはしっかりと疲れが取れていないようだった。少しだけ休ませたんだけどね。

 遺跡からパドゥムの街までは一日足らずで到着する距離。いつも通りの体調なら何ら問題ない距離でも昨日のヴィリディスでは強行軍に感じただろう。

 それが朝になっても起きて来れない理由だ。


「だから、わかってるわよね?コーネリアス……」


 そう言いながら僕に迫るフラウ。

 その上目遣いは卑怯だぞ!断れるわけないだろう。

 それでなくても、出掛けるって約束したからね。破るつもりはないよ。


「そうだな。昨日のあの干し肉を買わないといけないしな~」

「ま、それはどうでも良いんだけどね。フフフ……」


 デートするのは良いけど……、なんか、不敵な笑みを浮かべるフラウが少し怖いんだけど?

 僕、今日帰ってこれるのだろうか?

 途中で拉致監禁……なんてされないだろうか?

 あ、一緒に行動しているのに拉致監禁ってある訳ないか。

 それにしても、宿に戻ってきた段階で怖い事されそう。

 一晩中相手をさせられるとか?寝られないとか?


 ……。


 前かがみになりそうだから、変なこと考えないでデートを楽しもう。




 鼾をかいているヴィリディスを宿に置いてパドゥムの街に二人で繰り出した。

 出かけている事は宿の主人に伝えているので大丈夫だろう。

 あの調子だと夜まで起きない可能性があるから……。

 本当に大丈夫だろうね?


「ほらっ!入るわよ」

「引っ張んないでくれよ」

「ダメよ!今日一日、わたしの召使役なんだから!」

「はいはい……」


 召使役と言っても執事に扮しろとか、頭を下げろって意味じゃない。

 簡単に言うと……。


 荷物持ち。


 って所だ。

 それだけでも苦痛なんだけどね。

 ただ、鍛冶の街でお洒落オサレな服はあまり見ない。どちらかと言うと、質実剛健な武器や防具の方が多いくらいだ。

 出身地のウェールの街だったら半々位なんだけどね。

 そんな街なもんだから、召使役の僕は荷物持ちをすることなく、フラウが行く場所行く場所へ、尻を追いかける、そんな様に見られても仕方ない様相で付いて行くしかなかった。

 まぁ、ぷりっとした尻を追いかけるのは別に良いんだけど?


「で、今度は何処へ行くのでしょうか?お嬢様」


 何処へ行っても気に入った物が無いらしく手ぶらで出てきてしまう。

 フラウの行動が冷やかしとしか思えず、思わず揶揄う様な言葉を吐き出してしまう。

 まぁ、彼女は嫌味として捉える事は無いと思うけど?


「そうね……。あそこなんかどうかしら?」

「ん?」


 フラウが次に向かおうと指した場所は、彼女が興味をそそる事が殆ど無い本屋だった。


 今では本を買うのはかなり一般的になったが、少し前は本と言えば金貨をこれでもかと積まないと買えない高嶺の花の一つだった。高位の貴族や王様、もしくは国が揃えるのが一般的だった。

 だけど、印刷技術の発展により本の価格が一気に下がり、一般庶民の間で娯楽として広がって行った。


 と言っても、月の給料の十分の一程の金額はするので、気軽にほいほいと買う事は出来ない。金貨を積んでいた時に比べれば月とスッポンであろう。


 そんな本屋に、機嫌良さそうに向かうフラウに違和感を覚えつつ、従うしかないと溜息を吐きながら本屋へと仲良く入って行った。

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