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 ご老人から面白い魔法、不思議な光を飛ばす魔法を聞いたけど、知り得た情報はそれほど多くは無かった。いや、それ以外に無かった。

 聞いた内容だって、物語とほぼ同義だったからね。

 何処でどのような人たちが魔法を使っているのかなんて、全く分からなかったから、ガックリと肩を落としたのはご老人には内緒だ。


 だけど、調べるべきことがわかったのは僥倖だろうね。

 ご老人に紹介された海の向こうから運ばれてきた物語を調べれば何かわかるかもしれないし。

 ただ、調べるのが物語ってのが少し厄介かもしれない。事実を書いた書物だったらわかりやすいかもしれないけど、物語だからねぇ。

 どんな脚色がされているかわかったもんじゃない。


 ま、一つ手掛かりが出来たって事で喜ぶことにしよう。

 ヴィリディスも喜んでいる事だし。




 ご老人から話を聞いた翌日、運が良いことに次の街へ向かう乗合馬車に乗ることができた。ご老人とは一緒にならずに少し残念だったけど、結構な情報を教えて貰えたので感謝するしかない。

 ありがとう、隠居のご老人。


 次の街へは二日。

 そして、待望のアダンナの街へ更に三日で到着。

 乗り継ぎがよく、何日も待たずに到着できたのは素晴らしかった。

 思わず今年の運を使い果たしてしまったのではないかと思った。


 でもそれは全く違った。

 運を使った!そんな事は無かったからだ。

 アダンナから目的地のパドゥムの街向う乗合馬車が直ぐに乗れず、三日も掛かった。

 だから、運を使い果たしたと言うよりも使った運を回収したと表現した方が良いかもしれない。

 まぁ、それがどうしたって話だけどな。




 それはそうとして、僕たちはやっとのことで目的地のパドゥムの街へと到着した。


 パドゥムの街は標高五百メートル程の高地に作られている。

 西側は段々畑に果樹園が沢山見られ、それらを他の街に出荷して外貨を稼いでいる。小麦などの穀物も取れるが、街で消費する分には足りない。穀物類は他の街から買わないと足りない。

 そして東側に広がる坑道だ。鉄器に使われる鉄鉱石や魔石に使われる水晶が採れる。鉄鉱石と水晶は一緒の所に出る訳では無いけど、こんなに近くで採れるのは珍しい。


 ちなみに街の人口は五千人程でその半数程度が鉄や水晶を相手に採掘や物作りをしている。

 だからパドゥムの街は農業よりも鍛冶などの物作りを主な産業としていて、鍛冶の街と言っても過言でないだろう。


「と、このパンフレットに書いてあるね」


 乗合馬車の停車場から街をブラブラと歩きながら一部買ったパンフレットを読み上げる。

 その結果わかったのが、鍛冶が盛んで果物がわんさと採れる。

 まぁ、そんな街だと言う事だ。


 パンフレットを読んでしまったらそこで終わりだ。

 女の子の好きそうな果物がわんさと採れる、となったからね。

 そう、フラウも女の子。

 甘いもの大好き。

 目をキラキラさせて街中へすごい勢いで視線を走らせる。


 果物は切って食べるのもいいけど、パイとかケーキとか、加工して食べてもおいしい。

 と言う訳で、甘い匂いを見つけたらしく、彼女に引かれてカフェへと入って行く。

 フラウが僕たちの手を引っ張って強引に……だけどね。


「それで、ほれはらこれからほうふるどうするの?」


 注文を終え、テーブルにドンッ!とフルーツたっぷりのパイが置かれた。

 そのうちの一切れをおいしそうに頬張りながらこれからの行動予定はどうなのかと確認してくる。

 確認するのは良いけど、口に沢山頬張ったまま喋るのは如何なものかと思うが?


「どうするって、遺跡を見に行くんだけど?それがどうした」


 ヴィリディスからは当然の答えが帰って来るだけだ。

 そのように予定しているからね。

 クリガーマン教授から依頼を終えなければ帰れないし、報酬も貰えないからね。


「で、ほのいへひその遺跡ほほ何処にあるの?」


 だから、口に食べ物を入れたまま喋らないの!


「坑道のある東側だな。パンフレットには書いてないが」


 ヴィリディスが答える。

 行動指針は決まった。まぁ、明日以降の予定である。

 今日はこのまま、パドゥムの街を観光して宿で休むことになるだろうね。


 それにしても、ヴィリディスはフラウの言葉がよくわかったな。

 僕だって半分くらいしかわからなかったのに……。

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