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クリガーマン教授から依頼を受けた僕たちは一週間と数日前に旅立ったサラゴナの街を目指している。中間地点としてね。
貸し出しの馬車で一週間程度で到着なのだが、今回は乗合馬車を乗り継ぐ予定で一週間では到着しない事が決定している。急ぎの依頼ではないけど、初めての隣国と言う事で心は急いてしまうのは仕方がない。僕もフラウも。
驚くことにヴィリディスも急いているみたいだった。
「早く隣国に到着しないかな~」
「隣国隣国と言っているが、正式名称があるんだから覚えておくべきだろう」
そう言えば国の名称って気にしてないから、自分が住んでる国も王様が治めているから王国王国って言ってるだけだな。フラウは王様がいるって事を覚えているだけで、名前を覚えてないみたいだな。
ちなみにであるが、僕たちが住む場所はエンフィールド王国で、今向かっている隣国がカークランド王国だ。基本的に王様の名前が国の名前になっている。
だから、僕たちの国の王様はエンフィールドさんで、隣国はカークランドさんだ。
”さん”付けで呼ぶのは本来は不敬罪でお縄になるだろうけど……。
王様の前じゃないから、許してくれ……る?
「それにしても教授もこんなのをよくも、まぁ、用意してくれたよな」
ヴィリディスが鞄に忍ばせたあるものを思い出して呟く。
「それだけで数日かかったからなぁ。しかたないんじゃない、王立高等教育学院の印が押された正式な依頼書なんて」
教授が言うにはそれ程、権威ある書類ではないが無いよりはマシだろうとの事だ。本来なら玉璽を押してもらうのが一番なのだが、そんなのをポンポンと押すほど僕たちに価値がある筈も無いからね。研究目的であると証明するには十分らしい。
なぜ、そんな王立高等教育学院の印を押してある依頼書を持っているかと言うと隣国との情勢にある。
簡単に言うと、こっちとあっちの国は余り仲が良くない。
国軍が動くほどではないが頻繁に小競り合いがある。
それ故に国境が定められたのだが……。
その国境がサラゴナの街からさらに西に進み一週間ほどの場所にある。
途中に幾つか街や村があるが。
冒険者カードを持っていれば国境を抜けるのは難しい事ではない。
ただ、国を跨いでの移動なので、諜報活動をする可能性がある冒険者と疑われると通してくれないばかりか、国境を少し進んだ場所で捕縛され囚われる事がある。
……らしい。
それを防ぐための王立高等教育学院の印が押してある依頼書なのであるが……。
「ま、これが無くても大丈夫だろうけどね。入るだけだったら」
「そんなもんかねぇ……」
「そんなもんだ。国境には両国の兵士が詰めてるから、大事にはならんよ」
はっはっは、と楽観的になるヴィリディス。
何時もはあんなに慎重なのに、この時ばかりは楽観的なのは何なのかと思う。
ただ、ヴィリディスが言うように国境に近づいてもいないのに心配するのは早すぎる気がするので、今は頭から消すことにして旅を楽しむことにする。
それから二週間と少し、僕たちの目の前にはカークランド王国との国境が近づいてきた。
サラゴナの街を経由して、乗合馬車を乗り継ぐ旅は魔物や盗賊などの襲撃もなく、無事に到着したのであるが……。
「まさか、国境が封鎖されているとは思わなかったなぁ……」
乗合馬車を下りて国境を越えようとした僕たちが目にしたのは閉ざされた国境。
二進も三進も行かなく、途方に暮れる。
だけど、途方に暮れるのは僕たちだけじゃない。
行商で国と国を行き来している商人はもっと大変だ。
鉄器や陶器など、腐らないものを扱っているのならともかく、保存食などを扱っている商人はどうするかと頭を抱えているだろうからね。保存食とは言っても腐らない、ってことは無い。気温が上がってくれば、傷む事もあるだろうからね。
そうなると、損をしてでも商品を売ってしまった方がいい時もある。
どうして国境が封鎖されてしまっているのだろうか?
小競り合いが始まったとも聞いていないので不思議に思うのだった。
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