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 ”魔法陣”


 教授の口からその言葉を聞いたとき、僕は首を傾げてしまった。

 聞いたことがあったのだが、何だったかな?と。

 そして、暫くした後、”ああ、あれだった!”と手をポンと叩いて思い出すと、憑き物が落ちた、そんな気がした。


 魔法陣とは魔石に刻み込まれる回路の事を言う。

 魔石とは回路を刻み込んだ魔法陣を刻み込んだ人工的に作られた水晶の事を言う。

 魔道具とは魔石を使って、目的の効果を発現させる道具の事を言う。

 全て一般的には、だけどね。


 と言う事で、”魔法陣”とは呼ばず、”回路”と呼ぶことが一般的なので、思わず首を傾げたのが事実なんだ。

 だから、それが事実なんだって。

 忘れてただけだぞ。


 その魔法陣。

 実は驚くべきことがある。

 普通、一般的に知られているのは魔石に刻み込まれた回路だって事。

 手の平に乗るような魔石に刻まれるんだから、魔法陣は小さな物ってイメージがある。


 でも、教授が口にしたのは人が寝転んでもすっぽりと入ってしまうくらいの大きさ。

 巨大な図形が魔法陣だと言われても疑問に思うのは当然でしょうに。


「そんな巨大な魔法陣なんて存在しているんですか?」


 思わず疑問に思っていたことを質問していた。


「存在しているからこそ、魔法陣だって言ったんだぞ。まぁ、今の人たちには魔法陣ってのは小さい魔石に刻み込む回路が一般的だから仕方ないか……」


 僕が考えていたことをあっさりと言い切った教授。

 自分が発した言葉にそれだけ自信があるのだろう。


「それでだ。ヴィリディス、お前が伝えるべきことを秘密にしていた事を私の願いを叶えてくれればチャラにしてやってもいい」

「そうですか……。また無理難題をやれと言われそうで怖いですけど」


 情報を伝えなかった事で教授の逆鱗に触れ怒りを買ったヴィリディス。

 交換条件を提示されてご愁傷様と言わざるを得ない。

 まぁ、身から出た錆……。そう思わないでもない。


「そうそう、ヴィリディスだけに罰を与えるのも何だから、これはお前達への交換条件と思ってくれ」

「はひぃ?」

「ほへ?」


 ヴィリディスに罰が下った!と思ったのも束の間、思いっきり罰に巻き込まれた!

 いやいやいやいや。何で僕たちが?

 これは教授じゃなく、ヴィリディスに責任を取って貰わなくちゃならない。

 そう思ってジトッと目を細めて彼を見やる。


「連帯責任ってやつだ」

「教授、それは違うと思うが?」

「そうか?」


 教授、連帯責任って言いますけど、僕たちと教授は元々知り合いでも何でもないですからね。サラゴナの街で初めて会ったんですから。

 連帯責任ってのは酷いですよ……。


「とまぁ、巫山戯るのはこのくらいにして……」

「お巫山戯だったの?」


 思わずフラウが口にしていたが、僕もそう思ったよ。


「罰じゃないが、依頼することが出来てしまってな、それを頼みたい」

「依頼ですか……」


 依頼と言われれば仕方がない。

 僕たちは冒険者なのだから、依頼を受けるのは当然と言えるかもしれない。

 ただ、冒険者ギルドを通しては貰いたいと思うが。


「では、その依頼ってのを聞かせて貰いますよ。受ける受けないはそれを聞いた後で」

「調査依頼だから受けて貰いたいんだが……。仕方ないか、少し待て」


 そう言うとクリガーマン教授は傍にある扉から隣の部屋へと入って行った。

 すぐ戻って来るかと思っていたが、開け放たれた扉の向こうから、”これでもない、これも違う”と、何かを探している声が聞こえてくる。

 教授の部屋と同じような資料があるとすれば書類や書籍など、それらを探していると考えるのだが……。


「おお、すまんな。やっと見つけてきたぞ」


 お茶を飲み干す時間が経って戻ってきた教授の手には数冊の本と一つの魔道具が握られていた。

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