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二重の円。
同心円状に描かれた二つの円。
僕たちからすればそれだけの事。
床に描かれていたからと言って別段、不思議に思わない。
別の遺跡にあって、ここにもあってもね。
だけど、別の見方をしたらどうだろうか?
ゴブリンの巨大な群れを殲滅中、とある場所の遺跡に住み着いたゴブリンリーダー率いる小さな群れと僕たちは戦った。
ゴブリンたちにとってその場所は巣を作るのに最適な場所だった。
奥にリーダーの玉座を配置し、外からせっせと食料を持ち込む。
そして、蔓延らせたメスと繁殖し群れを大きくする。
それが目的だっただろう。
でも、僕たちがその夢を潰えさせた。
それはどうでも良い。
問題となるのは、その時がゴブリンで、今回がトロールが住み着いていた事だ。
どちらも魔物であるが関連は無い。
ゴブリンはトロールに食われる関係でしかないから、トロールが見えれば逃げるだろう。
捕食されるか、するか、それだけの関係。
しかし、固有で扱うスキルではどうだろうか?
大げさに考えなくてもよい。
ゴブリンはどんな個体でも身体強化魔法を使う。実際、意図して魔法を使っている訳ではないだろう。無意識のうちに身体強化魔法を使っていると言わざるを得ない。
あの、ガリガリに痩せた栄養失調状態の身体で人間の大人並に力を発揮させるには使うしかないんだからね。
そして、トロールは治癒能力を有する。
腕を切り落とされても切断面どおしをくっ付ければ瞬時に元通りになるのだから侮れない。
それで、だ。
あの遺跡に住み着いたゴブリンも、この遺跡でハーレムを作っていたトロールもどちらも固有のスキルを使えないようになっていた。
ゴブリンは力が弱く、トロールは怪我を治せない。
こんな偶然があって良いのだろうか?
全く異なる遺跡で、全く異なる魔物が、スキルを使えないのだから。
そのどちらにも共通するのが打ち捨てられた遺跡と二重の円だ。
だけど、そのどちらが原因であるとはまだわからないが……。
僕はその考えをヴィリディスにゆっくりと話した。
「オレもそう思っている。だが、それが本当に原因なのか判断がつかない。偶然だったにせよ、これからの研究で答えが出るだろうが……」
あくまでも今のは僕やヴィリディスの予想であって、断定するべきことでもない。
副次的な事であって、今の目的は別にある。
「それで、探し物はあったのか?」
「あぁ、見つけたぞ。トロールが巣にしていた場所には殆ど無かったが、少し離れた場所に沢山見つけた。教授はそれを見て飛び上がって喜んでいたぞ」
何となくだけど、びっしりと残された文字らしき文様を発見したと語ったヴィリディスは嬉しそうな表情を残していた。
この遺跡に足を運んだのは文字らしき文様を調べる事。
もし、その意味が分かればヒントを得られるのではないかと淡い期待を抱いていいる。
僕じゃなくヴィリディスが、だけどね。
「それじゃ、後はそれを調べるだけだな」
「そう言う事になる」
とりあえず、僕たちが請け負ったトロールの駆除は終わりになる。
合計九体のトロールを駆除したのだから相当な報酬を貰う事になるだろう。
まぁ、兵士たちと合わせてだけどね。
亡くなった兵士には申し訳ないが、冒険者は生き残って報酬を受け取るのが仕事だからね。僕は喜びをかみしめる。
「それで、これからはどうするんだ?」
「調べる場所はわかってるから、教授とオレは文字の解読を進める。最低でも一週間はここにいるだろうから、動けるようにゆっくりと休んでいてくれ。今だったら兵士たちも交代で歩哨に立つだろうし、トロールのような脅威は現れないだろうからな」
「それなら少し休ませてもらうよ。まだ、身体のあちこちが痛んだ」
僕はそう告げると目を瞑り、再び夢の中へと沈んでいった。
トロールとの死闘が悪夢として見る事になろうとも知らずに……。
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