-5- ヴィリディス2-2(2/3)
「身体強化を使っていなかっただと?ゴブリンが!」
「説明するから落ち着けって」
オレに迫ってきたバシルをなだめる。
そのままだったらきっと、バシルと口付けしてしまっただろう。いくら性欲が弱いとはいえ、同性と深いキスをするほど枯れてはいない。
出来れば綺麗な人とがいいのだがな……。
おっと、その話は後だ。
「まず、オレたちが大規模なゴブリン退治に向かったのは知っての通りだ」
「ああ。街中ではそれで大騒ぎだったからな。千匹くらい、城壁で守られた街だったら大丈夫だが、街道を歩いているだけで襲われる可能性が……いや、ゴブリン共に街道を封鎖されると物流が滞るからな」
オレたちみたいな冒険者が数人集まっても千匹はキツイ。流石に軍隊に出張ってもらうのが一番だった。アレはそう言う依頼なんだ。
「それで、討伐は簡単に完了したんだ。これも知ってるだろう」
「流石に領兵だって噂してるぜ。あの騒ぎは何だったんだろうな。今頃モテてるのかねぇ」
「そこは知らん」
「少しは興味を持たんか?」
訓練十分な領兵がゴブリン共を駆逐した。
ここまでは誰でも知っている。
「ここからだ。誰に言ってないが、遺跡から西の森に入って行ったんだ」
「ふむ、西の森ねえ……。確かに遺跡があるから、そこから奥には行かんだろうな、普通だったら」
「普通じゃないか……。ま、認めんでもないが」
「それはどうかと思うがなぁ……」
普通じゃないと言われても誉め言葉にしか聞こえんのは何故だろうな。オレもそうだが、あのコーネリアスもフラウも、普通から少し(いや、大分?)外れているとは認めて良いと思う。
「そこでゴブリンと切り合ったんだ」
「お前がか?」
「そんな訳ないだろう。剣の腕が立つ仲間と一緒だからな。そいつは結構剣の腕が立つぞ」
オレの剣の腕は控えめに言ってもゴブリン一匹と切り合うのがやっとだ。一応、剣をぶら下げてはいるが、あくまでも護身用だ。そうなる前に魔法で片を付けてしまう、そっちの方が多いのは当然と言えば当然だ。
「そいつ曰く、”明らかに可笑しい、力が入ってない。身体強化魔法を使っていない”と言ってのけた。あれだけの剣の腕を持つ奴がそう言ったんだ、信じるしかなかったよ」
「なるほど、興味深いな……」
「それだけじゃないぞ」
ゴブリン共が身体強化魔法を使っていないだけならまだしも、その上位種も同じだったのだ。驚かぬわけがない。
その後に現れたゴブリンリーダーも同様だったと当然、伝えた。
「ゴブリンリーダーもか……」
「そのゴブリンリーダーも瞬殺と言ってもよかった。あれだけの腕を持っていたとしても瞬殺ってのは可笑しいとオレも思うさ。通常種のゴブリンと同じだったのだろう。身体強化魔法を使えなくて手にしていた剣を十全に振り回せなかった。そうでなければ説明がつかない」
オレが詳しく説明をすると、バシルは何かを思い付いたのか、部屋の奥から地図を取り出してきてテーブルに広げた。
ある程度は予想していたがレスタートン周辺の地図だ。だが、そこまでは詳しくない。ある程度の位置が判る程度だ。
当然、地図は戦略物資。詳細な地図など民間人が手に入れられるわけがない。位置がわかるだけの地図であっても相当な高値で取引される。
「そのゴブリンたちを見た場所がどのあたりか、判るか?」
「地図を出してきた段階でそうだろうと思ったぜ。見に行くつもりか?」
「当然。そうじゃなかったら、お前さんにもこの地図を見せんさ」
「この件は墓の中まで持っていく事にするよ」
「そうしてくれると助かる」
バシルが地図を所有していることを黙っていることを条件に、様々な調査を引き受けてくれると言う。
とりあえずはあの強化魔法をつかえなかったゴブリンたちがいた場所を調査したいとのことである。オレは地図上でおおよその場所と、巣の特徴を伝え、バシルとは別れた。
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