-18- フラウ1-1(1/2)

※初の別視点です。




 ワタシはフラウ。冒険者をやってる。

 田舎から遥々ウェールにやってきて冒険者登録した。

 三年目の今は初心者から一歩踏み出したくらいの実力、って言ってもいいのかな?


 元々は地元で実家の手伝いでもして一生生き行くんだろうな~、って思ってたから、のほほんと何も考えずに生活してた。


 ある時、親が詐欺に引っかかってしまって土地を取られちまったんだ。詐欺って分からないくらいの巧妙な手口にどうしようもなかった。村でも数人が同じように詐欺にあったから、親の土地だけが……ってならなかっただけマシ、って所かな。


 今までは土地に作物を植えてある程度の収入を得ていたんだけど、それが無くなった。無一文って訳じゃないけど生活は困窮する。困ったことにね。

 そのままじゃ食っていけない、生活困窮者になりかねないから、村を出てウェールに仕事を探しに移住したんだ。


 親は何とか仕事を見つけて収入を得られたんだけど、ワタシの立場は微妙になった。

 継げると思った土地が無くなり収入は無い。

 婿を取って幸せになれればなんて思ってたけどそれも無理。

 しかも、それを当てにしてたから勉強もそんなに頑張らなかった。

 まぁ、お金の管理はしないといけないから、読み書きと計算くらいは出来るんだけど、それ以上の知識は無い。


 それならって事で、腕っぷしだけで生き行ける冒険者になろうと思ったんだ。


 丁度、成人の儀を終えたばかりで登録するのは簡単だった。

 だけどね、そこからだよ。


 まず、ワタシの見た目。

 農作業をしていただけあり、結構いい体をしている。鍬とか鋤とか土いじりが専門だったから、それなりに成長して出っ張っている。まぁ、田舎者ってすぐにわかるけどね。

 この年齢まで育てば、男と女がいればどうなるかくらいわかってるさ。誰だって興味あるだろ。

 そうやってワタシが生まれたんだからな。


 つまりはワタシはこの体付きだから、男どもの視線にさらされまくったのさ。余り、気分は良くないけどね。

 肉体労働で生活を繋ぎながら弱い魔物狩りが出来るまで訓練を続けた。

 体力は有り余ってたから辛いことは、殆ど無かった。

 体力的には、だよ。

 まぁ、ちょっとは辛かったけどね。

 技術を会得するのはホントに辛かった。何度怒られたか。


 それよりも夏場だ。

 汗を掻いただけで何なんだろうね、あの視線は。


 まぁ、それは良い思い出として取っておくとしよう。

 良くないけどな。


 仕事の合間に訓練を続けて一年。

 ようやく自信をもって街の外に出る事が出来た。

 とは言ってもまだ魔物と戦うなんて出来なかったよ。

 簡単な依頼しかこなせなかったんだ。


 さらに一年、訓練と肉体労働と街の外での依頼を続けて、始めて魔物と戦う事になった。

 小さな子供程度の魔物。


 ゴブリンって言う奴だ。


 子供程度と言っても、人は違う種類だってのはよく聞いた。

 子供以上の知恵と、子供以上の筋力と、子供以上の器用さを兼ね備えているんだ、生半可な相手じゃないのは分かるだろう。

 ワタシを含めた六人で街の外に出てゴブリン退治に向かった。臨時に仲間になっただけの間柄だけどね。


 一対一で真正面から戦えば勝てる!

 って言われてたけど、少し勝手が違った。

 いや、舐めていたと言わざるを得ないだろうね。


 ゴブリンの巣らしき物を見つけたんだ、ワタシが。巣の周りに数匹のゴブリンがたむろして、何かをしていたとみんなに報告した。何をしているのかわからなかったけど、獲物武器を手にしてたから慎重に行動すべきだ、と合わせてね。

 そうしたら何を考えたのか、斥候役のワタシの意見を無視してみんな飛び出して行っちゃったんだ。六人で行動してて四人が飛び出していったんだよ。呆れるってもんでしょ。


 そこに残ったのはワタシともう一人。

 陰気な雰囲気をまとっていた火魔法が得意なヴィリディスって言う奴だけ。彼は人とあまりしゃべるのが得意じゃなく、細々と冒険者として仕事をしていたのだとか。


 二人で慎重に後を追いかけた。

 その後、どうなったか分かるだろう。

 ゴブリンの巣を遠目に見ただけだけど、四人の死体が転がってた。

 無残な殺され方をしてね。

 何匹かゴブリンを道連れにしたみたいだけど……。


 ワタシたちはゴブリンの巣の駆除を諦めてウェールの街に引き返した。

 何もかもが残念だったけど……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る