-16-
「素晴らしい!すごく上手いじゃないか!」
魔法の練習をしていると突然、声が飛んできた。
声を掛けられたと言った方がいいのかな?
集中していたとはいえ、予定に無かった声を聞き集中力が乱れてしまった。石礫は的を大きく外れて壁に激突し、砂礫へと瞬時に変わった。
う~ん、やはり病み上がりだからか集中力が続かないな。
これも要練習……だな。
っと、そうもしてられない。
声を掛けられたんだったな。
でも僕でよかったのか?
そう思いながらくるりと声の方へ体を向けると、少し離れたところで一人の女性がニコニコと僕を見ていた。
僕より少し年上って感じかな?ベテランって風には見えないな。
あくまでも僕よりも少し上って感じなだけ。
整った顔に凹凸のハッキリした身体だ、人気は出そうだね。男の
僕?
僕はそこまで煩悩むき出しにするほど獣じゃないよ。ホントだよ。
「えっと、何か用?」
練習を一旦休んで女性に声を返す。
その声を合図に、ゆっくり僕に歩み寄ってくる。
黄色がかった後ろで束ねた髪が横にゆらゆらと揺れ動くのが何とも艶めかしい。
そして、僕の一メートル前にピタリと止まると、大げさにジェスチャーを絡めながら再び声を上げる。
「練習の邪魔してごめんね。ワタシはフラウ、よろしくね」
「はぁ……。僕はコーネリアスだ」
「コーネリアスね……」
自己紹介をしてきたので思わず僕も名乗ってしまった。
そのフラウは僕の名前を反芻するようにして僕を見定めている。
この場所に足を運ぶってことは同じ冒険者だってのは分かる。僕が調達した装備と同じような革鎧を身に着けて、腰に短い剣を横に差しているから。刀身は長くないから、動きやすそうな役割を持っているのかもしれないね
「ゴメンゴメン。あの距離からの的当て、見事と思ってね」
「そう?今日は身体の調子が悪いから不甲斐ない結果だけど……」
「えっ?あれで調子が悪い!信じれれない。ワタシなんて命中率、あの半分だよ」
フラウさんが言うには水魔法を使うらしいが、初級の水弾をよく使うがこの距離では的に当たる事の方が珍しいらしい。そんな事を大げさに口にする。
練習すれば誰でも出来ると思うのだが、違うのかな?
「ちょっと見てて、水弾!」
右手を的に伸ばして魔法を使う。
水の塊が手の先に生み出されると僕の石礫と同じような速度で飛んで行き……。
「えっと……」
「だから言ったでしょ。コーネリアスの的当ては見事だって!」
その言葉通り、生み出された水の塊は大きく外れて地面に激突した。
壁に当たるのならまだしも、手前の地面に激突、つまりは届いていないのだ。
大きく弧を描くように打ち出さなければならないらしい。
えっと、僕の二十メートルが射程距離ってすごいのかな?もしかして……。
ただ、フラウさんの水弾、威力はばっちり。
たぶんだけど、的に何発か当てると破壊しちゃうと思う。水スキルの成長限界が高いんだろう。僕にはあの威力はどんなに逆立ちしても無理だからね。
出来るのはせいぜい沢山生み出してばら撒くとか、くらいだ。
「フラウさんの水弾……」
「フラウでいいよ」
”さん”は要らないらしい。年上だと思ったから敬称を付けたんだけど。要らないなら楽だ。
「フラウの水弾、威力は羨ましいよ。僕は成長限界が低いからあれが精一杯。魔物を倒すなんて夢のまた夢」
「そうなのか……。そう言われるとちょっと残念な気がするが……」
と言うか、フラウは何を僕に期待してるのだろうか?
帯剣しているとは言え、今日は普段使いの剣だけだからお金を持っているようには見えないはずだし……。
フラウが持ち上げるもんだから……余計に裏を見て怪しんでしまうな。
※コメントは削除されました(手動で)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます