ミツバチの雨やどり 🌺

上月くるを

第1話 すべての花から少しずつ花蜜をいただくのです




 雲間から顔を出した太陽が、地上の水滴をぐんぐんと空へもどし始めました。

 鳴りをひそめていた植物や動物たちの活動が、元気いっぱいに再開されます。


 やわらかな春風が、黒く濡れていた地面を、見る見る乾かしていきます。🍃

 樹木の幹という幹が大きな伸びをしてぶるぶるんと枝を揺すると、葉っぱのしずくがパラパラ降って来て、雨が上がったとよろこんでいた蝶や虫を驚かせています。👀


      *

 

 ハチの国では、女王バチが何千頭ものハチたちを集めて号令をかけました。📣


「さあ、春ですよ。活動の季節ですよ。みなさん、一所懸命はたらきましょうね」

「はい、女王さま!」

 張りきって返事をしたハチたちは、手に手に蜜籠みつかごを持って飛び立ちました(ほんとうはミツバチは小さな胃の中に花蜜を集めるのですが、これは物語なので、ね(笑))。✾

 

 ――ブンブン、ブンブン。(^^♪

 

 あたりは羽音でいっぱいになりました。

 女王バチは手を振って見送っています。

 

      *

 

 ほかのハチたちより、ひときわ小柄なフックンは、自分のからだの半分ほどもある蜜籠を抱えて花から花へと飛びまわり、せっせと甘い花蜜を集めてまわっています。


 フックンはどんなに小さな花でも、地味で目立たない花でもおろそかにしません。


 ――お花さんたち、きれいに咲いてくれてありがとうね。🌸🌼🌹🌺🌷🌻🍁🍃


 やさしく声をかけながら、花の芯から、そうっと丁寧に蜜をすくい出すのです。

 花たちも花びらを精いっぱい大きく開き、蜜集めしやすいようにしてくれます。


 そんなフックンのまわりには、いつの間にかたくさんの仲間が集まって来ていて、フックンと同じように口々に花たちをいたわりながら、せっせと蜜を集めています。


「こうして丁寧にする仕事って、なんて楽しいんだろうねえ」ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

「1種類じゃなく、多種類のお花さんたちからいただいたハチミツは、とても甘くて栄養があるんだって、女王さまが言っていらしたよ。お花さんたち、ありがとう!」


 スミレ、タンポポ、アザミ、レンゲ、チューリップ、サクラ、アンズ、モモ……。

 さまざまな色やかたち、大きさの花たちも、みんなうれしそうに笑っています。


「いいえ、こちらこそ。わたしたちもミツバチさんたちのお役に立ててうれしいわ」

「わたしみたいに地味でめだたない花まで、たいせつにしてくださってありがとう」


 フックンと仲間たちは、来る日も来る日も、せっせと花蜜を集めてまわりました。

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